子どもの虫歯は親の責任?予防から最新の「低侵襲治療」まで「歯を守る全知識」

こんにちは。北広島市東共栄にあるMASA歯科衛生士の西里です。

毎日、たくさんの小さなお子さんと、そのお父さん・お母さんのお口を拝見しています。

診療室では、日々さまざまなドラマが生まれます。

初めての歯医者さんに緊張でカチコチになっている子、上手に口を開けられて得意げな子、そして「虫歯があります」と告げられてショックで涙ぐむお母さん……。

その中で、多くの保護者の方が同じような悩みや、時には「自分を責める気持ち」を抱えていることに気づきます。

「毎日仕上げ磨きをしているのに、なぜうちの子だけ虫歯になるの?」
「『未就学児の虫歯は親の責任』と言われて、心が折れそうです……」
「歯医者さんで泣き叫ぶ子どもを見るのが辛くて、通院が遠のいてしまった」
「治療したはずなのに、またすぐに虫歯ができてしまった」

もし今、この記事を読んでいるあなたがそう感じているなら、どうか一人で悩まないでください。あなたは決して一人ではありません。

かつての子どもの歯科治療は「押さえつけて、削って、詰める」ことが一般的でした。しかし、21世紀の現在、歯科医療の常識は変わりつつあります。

私たちMASA歯科では、最新の科学的根拠(エビデンス)に基づき、「大きく削る治療」から「リスクを管理する治療」へと大きく舵を切っています。

この記事では、私たち歯科衛生士が臨床現場で感じているリアルな声、そして小児歯科学会の最新データに基づき、お子さんの大切な歯を守るための情報を、どこよりも詳しくお伝えします。

「なぜ虫歯になるのか」
「どうすれば防げるのか」
「MASA歯科ではどのような『痛みに配慮した治療』を行っているのか」

この記事を読み終える頃には、あなたの不安は和らぎ、「よし、子どものために今日からこれを始めよう!」という前向きな気持ちに変わっているはずです。

お子さんの将来の笑顔を守るために、ぜひ最後までお付き合いください。

目次

なぜ子どもの歯はこんなにも脆いのか?プロが見る「3つの弱点」

乳歯と永久歯の強さの比較イラスト。エナメル質が薄く脆い子どもの歯と頑丈な大人の歯の違い

「大人の歯と同じように考えてはいけない」。これは私たちが常に保護者の方にお伝えしている、小児歯科の重要なポイントです。

私たち衛生士がマイクロスコープや拡大鏡でお子さんの歯を見ると、大人とは違う「デリケートさ」が見えてきます。

鎧(エナメル質)が薄く、未熟だから

歯の一番外側を覆っているのは「エナメル質」という組織です。これはダイヤモンドに近い硬さを持ち、人体の中で最も硬い組織として知られています。まさに歯を守る「鎧(よろい)」です。

しかし、乳歯のエナメル質の厚さは、永久歯の半分程度しかありません。大人の歯が分厚い鎧を着ているとしたら、子どもの歯は薄いコートを着ているような状態です。

更に重要なのは、「強さ」です。「対酸性」という、口の中の酸に対しての「溶けにくさ」も弱いのが乳歯です。

そして子どもといえど、「永久歯に生え変われば安心」と思っていませんか?

実は、永久歯であっても、生えてきたばかりの時期(萌出直後)は、歯の石灰化が終了しておらず、まだ表面が未完成で柔らかい状態なのです。

歯は、生えた瞬間が完成形ではありません。お口の中に出てきてから、唾液中のカルシウムやリンを取り込んで、約3年もの月日をかけて硬くなっていきます。

この「未熟な3年間」は、酸に対する抵抗力が弱いため、日々のケアを怠ると溶かされやすい状態にあります。

ましてや萌出途中のタイミングは、歯の高さが周りの歯より低い状態になるため、歯ブラシが上手に当たらず、磨き残しが増えやすいです。

「生えたばかりだからこそ、一番守ってあげなければならない時期」なのです。

神経までの距離が近すぎる

歯の構造を家で例えるなら、外壁がエナメル質、内壁が象牙質、そして家の中枢にあるリビングルームが「歯髄(しずい)」です。歯髄には、神経や血管がたっぷり詰まっています。

乳歯は、歯自体のサイズが小さいのに、このリビングルーム(歯髄腔)が比較的大きいのが特徴です。

これは何を意味するかというと、「表面から神経までの距離が、とても近い」ということです。

大人の歯なら「表面を少し処置すれば済む」ような小さな虫歯でも、乳歯の場合は壁が薄く部屋が広いため、進行するとすぐに神経まで到達してしまいます。

しっかりフッ素を使用して歯を強化していたとしても、フッ素で強化できるのは歯のエナメル質だけなのです。

つまり、表面のエナメル質に虫歯で小さな穴をあけられてしまい、中の象牙質まで虫歯が進行した瞬間から、一気に虫歯の進行速度は速くなるのです。

「昨日までは普段通りだったのに、急に夜も眠れないほど痛がりだした」
「少し前まではなかったはずなのに、気づけばぽっかり穴が開いている」
「半年前に検診を受けたはずなのに、もう虫歯が神経まで達しているといわれた」

このようなお子さんが多いのは、乳歯特有の構造上の理由があるからです。

3. プロでも見つけにくい「隠れ虫歯」

「仕上げ磨きの時に毎日しっかり見ていたのに、穴なんてなかったです!」


虫歯が見つかった時、驚かれるお母さんは多いです。決して見落としていたわけではありません。子どもの虫歯のなり方が、大人とは違うのです。

子どもの虫歯の多くは、見えやすい歯の噛み合わせだけでなく、「歯と歯の間(隣接面)」からこっそり始まります。


永久歯の場合は、隣の歯との間は点接触していることが多いのに比べ、乳歯の奥歯は、面と面が広く接触しています。

ここは歯ブラシの毛先が届きにくいため、フロス(糸ようじ)を通さない限り、汚れが溜まりやすい場所です。

また、くっついてしまっている場所なので、目で見ても、汚れが溜まっているか、虫歯があるかどうかはわかりません。

さらに注意が必要なのが、「隠れ虫歯」です。

「虫歯と言えば、黒くなるもの」と思っていませんか?

実は乳歯の虫歯の多くは、一見すると「白いまま」あるいは「わずかに白く濁っているだけ」に見えます。

歯と歯の間の見えにくい場所に、白い虫歯ができてしまったとしても、ご自宅でお父さんお母さんが早期に気付くということは、至難の業なのです。

そのため歯科医院の検診では、しっかりとライトを当て、「白く透けている部分がないか」を確認したり、邪魔な唾液を風で飛ばし、乾かした状態で「小さな穴が開いていないか」をチェックしています。

虫歯かどうか怪しい部分は、肉眼だけでなく、マイクロスコープや拡大鏡、ダイアグノデントなど機械を使用して慎重に虫歯を探していきます。

しかし、私たちプロが直接見て、虫歯がないように見えた場合でも、レントゲンを撮ると、中で神経近くまで進行している……ということが頻繁にあります。

「黒くないから大丈夫」という判断は、子どもの歯においてはとても大きなリスクがあるのです。

未就学児の虫歯は「保護者の協力が不可欠」な現実

3歳の子どもの仕上げ磨きをする母親。膝の上で優しく歯磨きをして虫歯を予防する親子の様子

少し厳しい表現に聞こえるかもしれませんが、私たち小児歯科医療に従事する者の間では、「未就学児(小学校入学前)の虫歯予防には、保護者の管理が不可欠である」と考えています。

これはお母さん・お父さんを責めているのではありません。「それくらい大人のサポートが必要な時期なんだ」ということを知ってほしいのです。

子どもには「磨く能力」が物理的に不十分です

2歳、3歳になると「自分でやる!」と歯ブラシを奪い取る時期があります。その自立心はとても大切です。
しかし、幼児の手先の器用さ(巧緻性)で、複雑な歯の形、特に奥歯の溝や歯と歯の間を完璧に磨くことは困難です。

小学校低学年であっても、自分ひとりで完璧に汚れを落とせる子は稀です。
自分で磨く習慣をつけることは大切ですが、あくまで「練習」と捉えてください。最終的な汚れの除去(仕上げ磨き)は、保護者の方が責任を持って行ってあげてください。

基本的には小学校3〜4年生まで、甘えん坊さんや磨くのが苦手な子は小学校6年生まで、仕上げ磨きを推奨しています。

食生活の決定権は「大人」にあります

当たり前ですが、子どもは自分でスーパーに行き、お菓子を買ってくるわけではありません。

冷蔵庫に入っているジュース、テーブルの上のチョコレート。これらを用意し、与えているのは周囲の大人です。

特に3歳までの時期は「味覚形成期」と呼ばれます。この時期に甘味の強いものを常習的に与えてしまうと、脳がその味を記憶し、甘いものを好む食習慣が定着しやすくなります。

食環境をコントロールできるのは、大人だけなのです。もちろん、「お菓子や間食をしてはいけない」というわけではありません

間食・補食は、ただの子どもの楽しみや贅沢品ではなく、1回の食事だけでは十分な栄養をとることができないお子さんにとって、必要不可欠なものです。

しかし、それは、必ずしも甘いお菓子である必要はなく、日に何度も時間をかけて食べる必要もないのです。

「時間を守ってお菓子をたべる」
「できるだけ砂糖が少なく、歯への停滞性が低いものを選ぶ」
「フルーツやチーズなど、お菓子以外の選択肢を増やす」
「子ども本人にも、間食の内容や時間帯を適切に選ぶ練習をさせる」

などの工夫の積み重ねが、お子さんの歯を、虫歯から守るきっかけになっていくのです。

また、意外と盲点なのが、

「ジュースではなく水にしているから大丈夫」と言いつつ、「味付きの水」を飲んでいる。
「砂糖ではなく蜂蜜だから大丈夫」
「100%のフルーツジュースや、野菜ジュースだから大丈夫」

といった、誤った認識です。

もちろん、ジュースやお菓子に比べれば体に良く、虫歯のリスクが若干下がるかもしれません。それでも、これらにも虫歯のリスクはしっかりあるのです。

通常のお菓子やジュースと同じく、時間や回数を守って摂取しなければ、虫歯の原因となってしまうので、注意が必要です。

「ご家族全員」での協力が必要です

「お母さんは頑張っているのに、お父さんや祖父母が甘いものをあげてしまう」。これは本当によく聞くお悩みです。

虫歯予防は、お母さん一人では困難です。家族全員の協力が必要です。

「昔は虫歯なんて当たり前だった」かもしれませんが、今は「予防できる病気」です。

家族全員が「なぜ今、甘いものを控えるべきなのか」「乳歯の虫歯が将来どんな悪影響を及ぼすのか」を知る必要があります。

中には、お母さんが協力を依頼しても「お前は神経質だ」「子どもに厳しすぎる」「子どもが喜ぶんだから、いいじゃないか」と逆に怒られてしまい、悲しい思いをしてしまった。

というお母さんも、多くいらっしゃるかと思います。そんな時には、ぜひ、検診の際にお父さんやおじいちゃん、おばあちゃんも一緒に来院なさってください。

MASA歯科では、お子さんの付き添いに関しての人数制限はありません。

私たち歯科衛生士が、お母さんと一緒に、お父さんが納得してくれるまでところんお付き合いして、説明いたします。

今の時代、お子さんを歯医者に連れてくるのがお母さんとは限りません。
いつもお父さんやおばあちゃんと一緒に来院されるお子さんも多くいらっしゃいます。

「お母さんなんだから大丈夫」「おばあちゃんだから関係ない」など、立場の違いは関係ありません。

大切なお子さんの将来のために、お子さんに関わるご家族みんなが、共通の意識を持って協力していけることが理想なのです。

この記事を、ぜひご家族にも見せてあげてください。私たちプロの言葉として、ご家族に伝われば嬉しいです。

最新科学が暴く「虫歯の原因」~バイ菌・砂糖・そして生活環境~

タブレットを見ながらお菓子やジュースを摂る子ども。虫歯のリスクを高める現代の生活習慣とスクリーンタイム

「甘いものを食べて歯磨きしないと虫歯になる」。これは基本ですが、最新の小児歯科学会の報告や疫学データを見ると、より複合的な原因が見えてきます。

菌はいつ、どこから来る?(感染リスク)

生まれたばかりの赤ちゃんの口には、虫歯菌(ミュータンス菌)はいません。では、いつ感染するのでしょうか?

最新の研究では、生後6か月の「歯が生え始める時期」から、唾液を介して菌が定着し始めることが分かっています。

主な感染経路として、養育者からの感染(垂直感染)が挙げられます。

お母さんやお父さんの口の中に虫歯菌が多い場合、同じスプーンを使ったりすることで、子どもに菌が移るリスクが高まります。

また、保育園や幼稚園でのお友達同士での感染(水平感染)も、遺伝子レベルの研究で確認されています。

菌の感染を完全に防ぐことは現代社会では困難です。

しかし、「感染する時期をできるだけ遅らせる」こと、そして「感染する菌の量を減らす」ことは可能です。

菌の定着が遅いほど、将来の虫歯リスクが低くなる傾向があります。

ひと昔前までは、「箸の使いまわしをしてはいけない」「食べ物を冷まそうと、フーフーしてはいけない」とよく言われていました。

しかし、現代では、そのような指導をする歯科医院は減少してきています。

理由の一つ目は、それだけでは虫歯菌の感染は完全には防げないため。

お子さんにとって、ご自宅で家族と過ごす時間だけでなく、保育園などの集団生活もあれば、親戚やお友達のお子さんなど、他の人と接する機会もあることでしょう。

その全員が行動のすべてを気にすることは難しいですし、そもそも保育園では、ほとんどのお子さんが、あっという間におもちゃを口に入れてしまいますよね。

そんな、完璧が難しい状況下で、お母さんだけが「虫歯菌が移らないように」を意識していると、どうなるでしょうか。

よく聞く話では、「お父さんが、酔ったときフーフーしてしまった」「何度やめてと言っても、おばあちゃんがやめてくれない」などの家族トラブルが起きるというもの。

もちろん、家族全員が意識を高く持ち、気を付けてくれるのが理想ではあります。

しかし、ここで摩擦が起きてしまうと、「砂糖を控える」などの他の虫歯対策も、「またグチグチ言っていると思われるかな…」と、言いにくくなってしまいます。

ですので、まずは「菌を移さないように、ご両親もおじいちゃんおばあちゃんも皆が歯科検診に行き、口の中の菌を減らす」ことを推奨しています。

そして、原因の二つ目は、虫歯の進行は、菌よりも「食習慣」や「生活習慣」の影響の方が強く関係すると言われるため。

菌が移ることに関しては、努力だけでは防ぎきれない部分が多いですが、食べ物に関しては話が別です。お父さんお母さんの意識一つで、いくらでも改善が可能です。

「口の中のミュータンス菌が虫歯に関わる」ということは、紛れもない事実です。

しかし、「菌を移さないように行動する」という気持ちに捉われ過ぎることなく、ご家族で相談しながら、菌との付き合い方、虫歯の予防の仕方を模索していくことが理想ではないでしょうか。

そもそも、何を食べたら虫歯になる?

「甘いもの」「砂糖」を食べると虫歯になる。それは誰でも聞いたことがあるでしょう。でも具体的に、どんな食べ物の虫歯リスクが高いのでしょうか。

虫歯を引き起こしやすいものの特徴は、ざっくりと言えば、以下の2つです。

  • 甘いもの(砂糖)
  • 歯への停滞性、粘着性の高いもの

「甘いもの」というとざっくりし過ぎていますが、1番は砂糖(ショ糖)です。

ショ糖とは、スクロースと言う二糖類のこと。しかし、糖にはショ糖以外にもたくさんの種類があるのです。

たとえば、ブドウ糖(グルコース)、果物に含まれるフルクトース(果糖)や、牛乳などに含まれるラクトース(乳糖)、他にもオリゴ糖などがあります。

全種類の糖の中で、ダントツで虫歯の原因となりやすいのが、砂糖(ショ糖)なのです。

「白砂糖はだめだけど、きび砂糖ならいい」「茶色い砂糖なら大丈夫」という説を、耳にしたことがあるかもしれません。

しかし、どの砂糖もすべて「ショ糖」であり、虫歯リスクに大きな差はありません。

精製の過程で不純物を完全に除去した白砂糖に対し、きび砂糖などはミネラルを残したままなので、体へのよさ、味のマイルドさなどはメリットとしてあります。

しかし、ミュータンス菌のエサとなったときの、酸産生能=歯を溶かす力、虫歯をおこす力は白砂糖との違いはありません。

また、ブドウ糖や果糖、乳糖、蜂蜜、マヌカハニーなら虫歯にならないというわけではありません

たとえば、ショ糖と比較したときの、ブドウ糖や果糖の虫歯リスクは、20~30%減程度とされています。

確かにショ糖よりも良いのは確かですが、たった3割減のリスクでは、安心と言い切ることは出来ないですよね。

同じように蜂蜜や牛乳であっても、ショ糖よりも低いというだけで、ノーリスクではありません

もちろん、一切食べてはいけないというわけではありません。

たとえば、砂糖を使わず、かぼちゃや果物など、素材の甘みを活かしたお菓子にするなど、「可能であれば、よりリスクの少ないものを選ぶ」こと。

そして、「砂糖ではないから、いつ食べても虫歯にならない」と過信せず、適切な時間に食べることが重要です。

そして砂糖の種類の他に、もう一つの虫歯リスクにかかわる要素が「歯への停滞性」「粘着性」です。

甘いものを食べた後は、口の中は酸性になり、歯が溶ける時間になります。

酸性から中性に戻す中和能に差があるため、戻るまでの時間には個人差がありますが、例えば1時間程度で酸性から中性まで戻せるお子さんがいたとします。

その子がカップのソフトクリームを食べたとします。5分程度で食べ終わり、ソフトクリームは完全に溶けているので、1時間後には口の中が中性に戻るでしょう。

では、その子がコーンのソフトクリームを食べたとします。

コーンが歯の溝に入り込み、すぐに歯磨きをできなかった場合、そのコーンに含まれた砂糖は、そこに停滞している間、新たに酸を生み出していきます。

つまり、1時間経ったとしても、中性まで戻ることができません。

同じソフトクリームだとしても、このような違いがあります。

では、歯にくっつきやすいキャラメルや、そもそも食べ終わるまでの時間のかかる飴玉などは、どうでしょう。確実に歯が溶けている時間が長くなってしまいますよね。

これが、甘さの他に虫歯リスクを上げる原因となる「歯への停滞性」「粘着性」です。

虫歯リスクを下げたいお父さんお母さんは、おやつを買う際には、「砂糖」と「停滞性」を考えながら、選んでみてください。

母乳育児と虫歯の「関連性」

「母乳で虫歯になるの?」という質問もよく受けます。最新の論文データをまとめると、以下のような見解が示されています。

  • 生後12か月まで: 母乳育児が虫歯のリスクを高めるという明確な根拠はない。
  • 生後12か月以降: リスクが高まる可能性がある。特に「夜間の頻回授乳」が続くと、リスクが上昇するとの報告がある。

母乳自体は、市販のジュースなどのように砂糖が含まれているわけではないので、虫歯リスクが高いものではありません。

重要なのは、「母乳そのものが悪い」のではなく、「就寝時の口腔内環境」にあります。

睡眠中は、酸を中和してくれる「唾液」の分泌が極端に減ります。その状態で、乳糖を含む母乳が歯に長時間停滞すると、虫歯のリスクが高まります。

母乳も、虫歯リスクが高くないとはいえ、ゼロではありません。

1歳を過ぎたら、「飲んだら拭く・磨く」「寝る前は控える」といった管理が、歯を守るためには重要になります。

また、歯科衛生士だけでなく、分子栄養学アドバイザーの資格を持つ私の視点から見ても、2~3歳までの長すぎる授乳には不安があります。

2歳ごろもお子さんにとって、母乳はお母さんとのコミュニケーションであり、母子ともに大切な時間であるため、断乳をためらうお母さんも多いでしょう。

しかし、授乳を続けることで、お子さんの空腹感が減り、食事量が減ってしまい、結果として栄養が足りなくなること。

更にはお母さんも、鉄不足などの栄養不足が起こり、メンタルが安定しなくなるなど問題が起こりやすくなります。

更に、授乳による吸てつ運動ばかり鍛えられ、食事が減ることで「噛む力」「食べ物を飲み込む力」を身に着ける時期を逃してしまうリスクもあります。

そうすると、歯並びの悪化や、口腔機能発達不全症を引き起こす可能性が高くなります。

授乳・断乳に関しては、各方向での専門家から様々な意見があり、迷うことも多いですよね。

歯科衛生士の視点からは、「虫歯リスク」「歯並び」「口腔機能」の観点から、長すぎる授乳はおすすめしていません。

「視力低下」と「虫歯」の意外なデータ

令和5年度の学校保健統計調査によると、興味深いデータが出ています。子どもの虫歯は減少傾向にある一方で、視力1.0未満の子どもは増加傾向にあります。

ここから見えてくるのは、子どもたちの生活スタイルの変化です。室内でスマホやタブレットを見る「スクリーンタイム」が増えています。

動画を見ながらの時間は、どうしても「口寂しさ」からお菓子やジュースを摂取してしまうリスク(ながら食べ)を高めます。

また、集中しすぎるあまり、「お口ぽかん」の状態になっている可能性もあります。

口が開いていたり、口呼吸になることで、口の中は乾燥します。そうすると、唾液本来の機能が弱まり、虫歯や歯肉炎に対する抵抗性も弱まってしまいます。

生活環境の変化に伴う新たなリスクに、注意が必要です。

「なりやすさ」の個人差

「あの子はお菓子を食べているのに虫歯ゼロ。うちは気をつけているのに……」

虫歯のリスクは「歯磨き」と「砂糖」だけでは決まりません。体質も関わっています。

  • 菌の数と強さ: ミュータンス菌の数や活動性。
  • 唾液の質: 酸を中和する能力(緩衝能)。
  • 歯並び: 歯が重なっている部分は磨きにくい。
  • 口呼吸: 口が開いていると乾燥し、唾液の作用が弱まる。

このように、リスク要因は一人ひとり違います。だからこそ、「その子のリスクに合わせたケア」が必要なのです。

「なりやすい」からといって、一生虫歯に悩み続けると決まったわけではありません。

「なりやすい」と早期に気付けたことは、大きな武器と言えます。

虫歯になりやすいからこそ、しっかりとフッ素を使う。間食の時間や内容に注意する。口を閉じて鼻で呼吸する練習をする。など、対策できることは十分にあります。

本人の素質だけでなく、行動で防ぐことができるのが虫歯です。落ち込まず、ひとつひとつを少しずつ意識して、虫歯にならないように気を付けていきましょう。

「乳歯だから大丈夫」は大間違い!放置が生む5つのリスク

乳歯の下で育つ永久歯の断面図イラスト。放置された虫歯が後続永久歯や歯並びの生え変わりに与える影響

「乳歯の虫歯なんて、どうせ抜けるから」と考えるのは早計です。

乳歯の虫歯を放置することは、お子さんの将来の「歯並び」や「永久歯」に悪影響を及ぼす可能性があります。

将来の歯並びへの影響

乳歯には、重要な役割があります。それは「後から生えてくる永久歯のための場所(スペース)を確保すること」です。

虫歯で乳歯が大きく欠けたり、早期に抜かなければならなくなると、空いたスペースに隣の歯が倒れ込んでくることがあります。

その結果、永久歯が生えるスペースがなくなり、歯並びが乱れる(叢生など)原因となります。乳歯を守ることは、将来の矯正治療のリスクを減らすことにもつながります。

永久歯の「変色」や「形成不全」(ターナー歯)

乳歯の根っこのすぐ下では、永久歯が育っています。乳歯の虫歯が進行して根の先に膿がたまると、その炎症の影響が永久歯に及ぶことがあります。

その結果、生えてきた永久歯のエナメル質が変色していたり、形がいびつになったりすることがあります(ターナー歯)。

永久歯の「生え変わり」のトラブル

重度の虫歯や根の病気があると、永久歯が生える時期に影響が出ることがあります。

本来より早く出てきてしまったり、逆にそこだけ永久歯がなかなか出てこなかったりと、生え変わりのリズムが乱れることがあります。

なかなか自力で抜けないという場合は、歯科医院で相談しましょう。

「永久歯がない」可能性

現代の子どもの約10人に1人は、もともと永久歯の数が足りない「先天性欠如」を持っていると言われています。

もし、「下に永久歯がある」と思い込んで乳歯の虫歯を放置してしまい、いざ重症になったため抜こうかとレントゲンを撮ってみたら、実は永久歯がなかった…

その場合、その場所は歯がないままになってしまいます。

虫歯の治療方針を決める前に、レントゲンで「永久歯の有無」を確認することが非常に重要です。

また、できれば虫歯になる前の検診の時点でレントゲンを撮り、永久歯の数を確認しておけば、「ここは永久歯がないから、この乳歯は一生使えるように絶対大事にしよう!」と意識することが可能です。

偏食・発育への影響

虫歯の痛みがあると、子どもは無意識に「噛まなくていいもの(柔らかいもの)」を好むようになりがちです。

しっかり噛む必要がある食材を避けることで、栄養バランスが偏り、発育に影響を与える可能性が指摘されています。

また、しっかり噛まないために歯並び悪くなり、口腔機能も発達しない、虫歯のせいで発音が悪くなる。など様々な悪影響が予想されます。

更には、前歯の虫歯がコンプレックスとなり、人前で笑わなくなるなど、心理的な影響も懸念されます。

痛みに配慮した、MASA歯科の「低侵襲治療(MI)」

削らない虫歯治療を受ける子ども。ドリルを使わず薬(サホライド)を塗布する痛みの少ない小児歯科治療

「歯医者さん=怖い」というイメージをお持ちではないですか?かつての歯科治療は、大きく削って詰める方法が主流でした。しかし、詰め物は永久ではありません。

現在、歯科医療のトレンドは「最小介入歯科(MI: Minimal Intervention)」です。これは、「できるだけ健康な歯を削らない」「神経を守る」ことを重視する治療法です。

MASA歯科では、このMI治療を積極的に取り入れています。

初期虫歯のうちから進行を抑える

虫歯の進行を抑えるために一般的に使用されるのは、高濃度のフッ素塗布です。

MASA歯科でも、希望される方にフッ素塗布を行っていますが、「フッ素に不安がある」「使いたくない」という方に強要はしていません。

安心して、フッ素を希望するかどうかお伝えください。

また、最近ではあまり使わない医院が多いですが、「サホライド」というお薬を使用することがあります。

塗布すると虫歯の部分が黒くなりますが、銀の殺菌力とフッ素の作用で、虫歯の進行を抑制します。

ドリルで削る必要がないため、治療を怖がってしまう低年齢のお子さんや、削るとリスクが高いケースにおいて、有効な選択肢の一つです。

黒くなるというデメリットはありますが、永久歯に生え変わるまでの「つなぎ」として、歯を守ることを優先する場合に選ばれています。

音や振動が少ない「エルビウムヤグレーザー」

MASA歯科には、「エルビウムヤグレーザー」を導入しています。

水分に反応して虫歯の部分だけを蒸散させる仕組みで、ドリルのような「キーン」という音や振動が少ないのが特徴です。

熱の発生も抑えられているため、症例によっては麻酔なし、または少量の麻酔で治療が可能です。「これなら頑張れる!」と言ってくれるお子さんも多いです。

また、年齢やその子の慣れ具合を確認しながら、「今、完全に虫歯を除去するべきなのか」も判断し、虫歯治療を行っています。

「今はまだ麻酔はできないけど、このまま虫歯を放置はできない」場合など、レーザーで痛みが出ない範囲内で虫歯を取って、詰めておきます。

その後、お子さんが大きくなって、本格的な治療ができると判断したころに、再度治療を行うというものです。

必ずしも「歯科的にみて完璧な虫歯治療」にこだわるのはなく、お子さんと親御さんと相談しながら、「今のこの子にとって最善な治療」を考え、治療していきます。

泣いても大丈夫? 私たちがサポートします

歯科衛生士とハイタッチをする笑顔の子ども。泣かずに通える歯医者を目指すMASA歯科のトレーニング風景

「うちの子、泣いて暴れるから……」と受診をためらわないでください。

私たちは、できるだけお子さんには笑顔で帰ってもらえるよう、検診や治療に当たっています。押さえつける治療は「緊急時のみ」としています。

MASA歯科では、緊急性が高い場合を除き、無理やり身体を拘束して治療することは推奨していません。

そのような体験がトラウマとなり、大人になっても歯科医院に行けなくなってしまうことを防ぐためです。

まずは「トレーニング」から始めます。

診療台に座る、器具を見せる、風をかける。「Tell-Show-Do法」を行い、お子さんが納得して口を開けられる信頼関係を築くことを大切にしています。

通常では2~3回の練習で、治療まで出来るようになる子が多いですが、なかには回数がかかり、なかなか治療に移れない子もいます。

時には、雑談だけして、何もせずに帰宅するということも。

しかし、今は忙しいお父さんお母さんが多く、間をつめての来院が難しかったり、「そこそこ大きい虫歯があるから、治療まで時間がかかるのは心配」となる場合もあります。

そのため、いざというときに虫歯治療ができるよう、普段から定期的に歯科検診に行き、歯医者になれておくと安心ですね。

普段からかかりつけ医に通い、「歯医者さんは怖くない場所」というイメージを作っておくことが大切です。

かかりつけ医がいれば、わずかな変化に早期に気づくことができ、負担の少ない処置で済む可能性が高まります。

年齢別・家庭でできる「効果的な予防プログラム」

子どもの虫歯予防グッズ一式。フッ素入り歯磨き粉、子ども用デンタルフロス、キシリトールタブレット

最後に、ご家庭で実践してほしい予防策をまとめます。

【0歳~1歳】 歯が生える前からの習慣

  • ケア: 歯が生える前は、濡らしたガーゼでお口の中を優しく拭いて、触られることに慣れさせましょう。
  • 食事: 哺乳瓶でジュースやイオン飲料を与えるのは控えましょう。寝かしつけ授乳後は、ガーゼで拭うなどのケアを推奨します。
  • 感染対策: 親御さん自身の虫歯治療を済ませておくことが大切です。

【1歳~3歳】 「イヤイヤ期」のケア

  • ケア: フッ素入り歯磨き粉(ジェルタイプ、500〜950ppm推奨)を使い始めます。量は「切った爪程度」の少量で。うがいができない場合は拭き取りでOKです。ジェルタイプの歯磨き粉は、磨いた後のうがいがなくても大丈夫です。
  • 食事: おやつの時間を決め、ダラダラ食べを防ぎます。歯にくっつきやすいお菓子は頻度を考えましょう。

【3歳~6歳】 仕上げ磨きが重要

  • ケア: 自分で磨かせた後、必ず親が仕上げ磨きをします。特に奥歯の溝と、歯と歯の間(フロス)が重要です。
  • 食事: WHOは1日の砂糖摂取量を総カロリーの5%未満(小さじ6杯分相当)にするよう推奨しています
  • シーラント: 奥歯が生え揃ったら、溝を埋める「シーラント」が効果的です。虫歯発生リスクを低減させます。

【6歳~12歳】 生え変わりの時期

  • ケア: 「6歳臼歯」が生えてきます。非常に虫歯になりやすいため、丁寧な仕上げ磨きが必要です。お友達の家など、家以外での間食が増えたり、遅い時間の習い事が増え、食事の時間がズレたり、生活の変化による虫歯が増えやすいので要注意です。
  • フッ素: 1450ppmの高濃度フッ素配合歯磨き粉が使用可能になります。

【全年齢共通】 キシリトールの活用

食後にキシリトール100%のガムやタブレットを摂取することも、予防の補助として有効です。

キシリトール以外にも、代用甘味料を使用することにより、虫歯リスクを下げることができるようになります。

しかし、代用甘味料も種類によっては体への影響が懸念されているため、MASA歯科では、特に代用甘味料の使用を強くすすめるということはしていません。

MASA歯科の定期検診でできること

ご家庭でのケアには限界があります。MASA歯科の定期検診では、以下のプロフェッショナルケアを行います。

  1. 高濃度フッ素塗布: 歯科医院専用の9000ppm以上の高濃度フッ素を塗布し、歯質を強化します。
  2. 虫歯のチェック: 視診だけでなく、必要に応じてレントゲン等で隠れ虫歯を確認します。
  3. 歯磨き指導: お子さんに合った磨き方、仕上げ磨きのコツをお伝えします。
  4. シーラント: 虫歯になりやすい奥歯の溝を樹脂で埋めます。
  5. 生活習慣のアドバイス: 無理のない範囲で、おやつや飲み物の摂り方について一緒に考えます。

まとめ:お子さんへの「かけがえのないプレゼント」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。子育ては本当に大変です。毎日完璧に仕上げ磨きをするのは難しい日もあると思います。だからこそ、私たちプロを頼ってください。

「歯ブラシが下手だから」と自分を責めないでください。リスクは一人ひとり違います。私たちは、お母さん・お父さんの味方です。

また、歯科検診は、「歯磨きの出来ていない場所を指摘される日」「お母さんが歯医者で怒られる場所」では決してありません。

「ちょっとしたことでも気軽に相談できる場所」「家じゃ頑張っても見つけられないトラブルを、見つけてくれる場所」と考え、気軽に来てもらえると、とても嬉しいです。

まだ虫歯がなくても、今日が「歯医者さんデビュー」の最適な日です。北広島市のMASA歯科でお待ちしています。一緒に、お子さんの「一生の笑顔」を守りましょう!

参考文献・出典(URL)

この記事は、以下の学術論文、ガイドライン、および統計調査に基づいて作成されています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次