【歯周組織再生療法】リグロスで歯科治療!効果と注意点を完全網羅【保存版】

「歯周病の治療で新薬のリグロスを勧められたけど、本当に効果があるのかな…」「新薬だから費用が高いのでは…」といった不安を抱えている方も多いことでしょう。

歯周病治療薬のリグロスは、歯周組織の再生を促す画期的な薬剤として注目を集めています。

この薬剤を使用することで、これまで難しかった歯周組織の再生が期待できるようになりました。

この記事では、歯周病の進行を食い止めたい方に向けて、

– リグロスの効果と作用の仕組み
– 治療にかかる費用と期間
– 治療時の注意点や副作用

上記について、歯科医療の現場で実際にリグロスを使用してきた経験を交えながら解説しています。

歯周病の治療方法は日々進化を遂げており、リグロスもその一つです。

あなたに合った治療法を見つけるためにも、ぜひ参考にしてください。

目次

リグロスとは何か?

リグロスは、歯周病治療に革新をもたらした画期的な再生医療製品です。

この治療法は、歯周組織を再生させる成分「FGF-2」(b-FGF)を主成分とし、失われた歯周組織を効果的に修復することができます。

具体的には、歯を支える骨や歯根膜などの組織を再生させる効果があり、従来の治療では難しかった歯周病の根本的な治療を可能にしました。

以下で、リグロスの基本的な知識から、治療効果、そして実際の治療例まで詳しく解説していきます。

歯周病の基礎知識

厚生労働省が実施した令和4年の歯科疾患実態調査によると、15歳以上の日本人の約47.9%が4mm以上の歯周ポケットを有しており、歯周病の可能性があるとされています。

参照:「令和4年歯科疾患実態調査」の結果

歯周病は進行すると歯を支える骨が減少し、最終的に歯を失う原因にもなる深刻な歯科疾患です。

日本だけではなく、ギネス世界記録に「全世界で最も蔓延している病気」として登録されているほど、世界中で罹患率の高い感染症です。

最初は歯茎の腫れや出血から始まり、放置すると歯を支える骨が溶けていく恐ろしい病気です。

歯周病菌の感染により歯周ポケットが深くなり、進行すると歯がグラグラして、最終的には抜け落ちてしまいます。

主な症状は、歯磨き時の出血や口臭、歯のぐらつきなどが挙げられるでしょう。

しかし、重度の段階に至るまで自覚症状が乏しいため、気付いた時には重症化しているケースも少なくありません。

歯周病の予防には、正しい歯磨き習慣と禁煙が効果的です。

また、定期的な歯科検診で早期発見することが非常に大切です。

糖尿病などの全身疾患との関連も大きいため、生活習慣の改善、およびかかりつけの病院と歯科医院との連携も重要な対策となっています。

歯周病は一度発症すると完治が難しい病気ですが、早期発見・早期治療により進行を食い止めることができます。

リグロスで歯周組織を再生

リグロスは歯周病治療に革新をもたらした再生医療用製剤です。

リグロスの主成分であるFGF‐2(b-FGF)は、医科では火傷治療の際の皮膚の再生治療などで、以前から使用されてきたものです。

その濃度などを調整し歯科用に応用されたリグロスは、2016年から販売及び保険適用での使用が開始され、現在徐々に治療成績を上げています。

一般に「歯ぐき」と呼ばれていますが、歯を支える歯周組織は、歯肉・歯槽骨・歯根膜・セメント質などがあります。

歯は基本的に歯槽骨(しそうこつ)という骨に支えられていて、歯肉は骨の表面に薄く乗っているだけです。

歯周病の初期では歯周組織の中でも、歯肉のみに炎症が生じている状態で、これは適切なケアにより、元に戻すことが可能です。

歯肉のみの炎症では、歯を支える力には影響が及ばないため、歯がグラグラする・抜けるという症状は起こりません。

そこから歯周病が進行して骨が溶かされていくと、歯が揺れたり、ポケットの中から膿が出てきたり、自覚しやすい症状が出てきます。

ここまで進行すると、自然治癒もしくは保険適用内の治療では「骨を再生させることは不可能」というのが、これまでの歯科での常識でした。

しかし、リグロスの登場により、歯周病で失われた歯槽骨や歯根膜を再生させる効果が期待できるようになりました。

FGF-2という人工タンパク質を主成分とし、歯周組織の再生を促進する働きを持っています。

歯周病によって破壊された組織を修復するためには、歯槽骨だけではなく歯根膜、セメント質といった複数の組織を同時に再生させる必要があります。

リグロスは、これらの組織を効率的に再生させる特徴を備えた画期的な治療薬なのです。

治療は局所麻酔後、歯肉を切開して歯周ポケット内の汚れや不良肉芽(感染した、ブヨブヨした悪い肉)を除去した後、リグロスを注入して縫合する流れで進みます。

手術時間は60~90分程度と比較的短時間で済むため、患者さんの負担も大きくはありません。

局所麻酔のみで可能で、術中の痛みは特にありませんが、恐怖心の強い方の場合は、全身麻酔や静脈内鎮静法などを併せて取り扱っている歯科医院や病院を選択するのもよいでしょう。

治療後は、早ければ2〜3ヶ月程度で歯周組織の再生が確認でき、1年程度で治療効果が安定してきます。

最近の発表では、「5~6年経過後もじわじわと骨が再生している」という報告もあるため、長期的な経過観察によって最終的な効果が確認できるでしょう。

歯周病の進行度や患者さんの生活習慣によって効果には個人差があります。

また、そもそも歯周病が進行するような口の状況であれば、造った骨の量よりも、新たに溶ける量が多くなり、再生療法を行った意味がなくなってしまいます。

そのため、定期的なメンテナンスが欠かせません。

リグロスの実績と信頼性

リグロスは、2016年の厚生労働省による承認以降、全国の歯科医院で着実な治療実績を積み重ねてきました。

特に重度の歯周病に対する治療効果は、日本歯周病学会でも高く評価されています。

臨床試験では、治療後6ヶ月で約80%の患者さんに歯周ポケットの改善が見られ、歯の動揺も大幅に減少するという結果が出ています。

MASA歯科では年間約100件程度のリグロス治療を実施し、数多くの患者様で骨の再生や歯周ポケットの改善が確認されています。

豊富な経験と、リグロスの特徴である歯周組織の再生効果が相まって、優れた治療成果を上げることができました。

リグロスの信頼性は、国内外の研究機関による長期的な追跡調査でも裏付けられています。

治療後5年経過しても、70%以上のケースで良好な状態を維持できることがわかりました。

また、従来の歯周病治療と比べて再発率が低いことも、大きな特長でしょう。

歯科専門誌「ザ・クインテッセンス」2021年3月号でも、リグロスの有効性と安全性について詳しい解説が掲載されていることから、専門家からの評価も非常に高いことがわかります。

リグロスの効果を徹底解説

リグロスによる再生療法は、歯周病によって失われた歯周組織を再生させる効果が臨床試験で実証されており、多くの患者さんの歯を保存することに成功しています。

たとえば、重度の歯周病で抜歯を検討していた40代の患者さんが、リグロス治療を受けることで歯周ポケットが改善し、歯を残すことができたケースも報告されています。

リグロスは、歯周病治療の新しい選択肢として、従来の治療では難しかった歯周組織の再生を可能にしました。

この治療法の特徴は、体内のタンパク質を活用して自然な組織再生を促すことにあります。

以下で、リグロス治療の具体的な効果と、それぞれの特徴について詳しく解説していきます。

抜歯を避けるリグロスの効果

リグロスは、歯周病で失われた歯周組織(歯槽骨、歯根膜など)を再生させる画期的な治療薬です。

深い歯周ポケットで歯を失うリスクがある患者さんに、新たな希望をもたらしました。

歯周病の進行によって支えが弱くなってしまった歯も、リグロスによって骨や歯根膜が再生することで、抜歯を回避できる可能性が高まります。

臨床試験では、治療6ヶ月後に約84%の患者で歯周ポケットの改善が確認されています。

リグロスの主成分であるFGF-2は、体内で自然に作られる成長因子の一種で、細胞の増殖を促進する働きがあります。

治療後は定期的なメンテナンスが重要ですが、適切なケアを続けることで、長期的な効果が期待できるのが特徴的。

MASA歯科では、リグロス治療の実績を多く持つ歯科医師が、患者さん一人一人の症状に合わせた治療計画を立案しています。

歯周病の進行度や骨の状態を詳しく診査し、最適なタイミングでリグロス治療を実施することで、高い治療効果を実現しました。

保険適用の治療であるため、経済的な負担を抑えながら最新の治療を受けられる点も魅力です。

進行する歯周病を抑える

歯周病の進行を抑制するリグロス治療は、歯周組織の再生を促す画期的な治療法として注目を集めています。

歯周ポケットは一度深くなると、基本的な治療だけでは改善が難しいケースが多いです。

歯周病初期の歯肉の腫れの段階であれば、炎症が抑えられて歯肉の腫れが治まれば、ポケットは元の数値まで戻ります。

しかし、中等度以上の歯周病の方の深いポケットは、歯肉の腫れではなく歯槽骨が失われたことによるものです。

そのため、基本的な歯周病治療でポケット内を完璧にきれいにできたとしても、ポケットが改善しない場合があります。

うまく歯肉が歯の根面にくっつき、ポケットが改善したとしても、そこは骨の裏打ちがなく、あくまで肉のみでくっついている状態なので、またすぐに深くなる可能性を否定できません。

歯周ポケットが改善されなければ、セルフケアを丁寧に行ったとして、深いポケットの中まで綺麗に保つことはできません。

こまめに歯科医院でクリーニングを行うにしても、セルフケアのように毎日行えるわけではないので、やはりポケット内は歯周病菌は増殖しやすい状態のままになります。

そういった理由から、一度歯周病が進行してしまうと、そこからの進行を防ぐのはとても難しくなります。

しかし、リグロスを行った場合、歯槽骨の再生及び歯周ポケットの深さを改善し、ポケットが浅くなります。

治療開始から3か月後には、約60%の患者さんに歯周ポケットの改善が見られたというデータもあります。

それに伴い、歯周病菌の減少効果が、臨床試験で実証されました。

歯肉の炎症や出血も改善され、口臭の軽減にも効果的な治療法となりました。

このように、リグロスを行うことによって、現在ある炎症を抑えてポケットを改善するだけでなく、今度の進行を予防しやすい状態にすることができます。

もちろんリグロスを行って終わりではなく、定期的なメンテナンスと適切な歯磨き習慣を継続することが、治療効果を長期的に維持するポイントになります。

患者への負担を軽減する理由

リグロス治療は従来の歯周病治療と比べて、患者さまの身体的・精神的な負担を大幅に軽減します。

手術時間は約60~90分程度で済むため、長時間の治療による疲労を感じにくいでしょう。

口を自力で開けているのが辛い場合には、開口器を使用したり、途中でこまめに休憩を取ることも可能です。

局所麻酔で行える治療のため、全身麻酔のリスクも回避できます。

治療後の痛みも比較的軽度で、翌日から通常の生活に戻れる患者様が多いです。

基本的に痛み止めは出しますが、「当日の夜に1回服用して終わり」というケースが1番多いです。

また、歯肉を大きく切開する必要がないため、術後の腫れも最小限に抑えられることが多いです。

リグロスは患部に直接塗布するだけの治療法です。骨移植のように、患部以外の部位も切開したり骨を削るような、侵襲的な(大変な)処置は不要です。

治療に伴う感染リスクも低く抑えられるのがポイントです。

さらに、歯周組織の再生を促す特徴から、治療後の経過も安定しやすい傾向にあります。

MASA歯科では、患者さまの不安を和らげるため、治療前のカウンセリングに十分な時間を確保しています。

少しでも治療に関して不安や疑問のある方は、お気軽にご相談ください。

リグロスは保険適用が可能

リグロスの治療費は、歯周病の進行度や治療範囲によっては保険として認められた治療です。

具体的には、4mm以上の歯周ポケットがあり、垂直性の骨吸収が認められる重度の歯周病患者に対して保険適用が可能です。

費用は、3割負担の場合、1本あたり約7,000円から11,000円程度の自己負担で治療を受けることができます。(再診料、同時に必要となる歯茎の手術、内服薬代などを含む)

保険適用には明確に条件があり、歯周基本治療を行っても改善が見られない場合や、エックス線写真で明確な骨欠損が確認できる場合などが該当します。

保険適用外となる場合は、1歯あたり5万円から10万円程度の費用がかかるため、事前に歯科医師との十分な相談が必要でしょう。

また、治療前のレントゲン検査や歯周組織検査なども保険でカバーされるため、経済的な負担を抑えながら最新の歯周病治療を受けられる選択肢となっています。

リグロスの適応症と禁忌症について

リグロス治療には適切な症例と避けるべき症例があり、治療の成功率を高めるためには、この見極めが非常に重要です。

歯科医師は患者一人ひとりの症状や口腔内の状態を詳しく診査し、リグロス治療が最適な選択肢かどうかを慎重に判断していきます。

具体的には、歯周ポケットの深さが4mm以上で、X線写真やCTで確認できる骨欠損の形状が3壁性や2壁性の症例が最も良い適応となります。

以下で詳しく解説していきます。

適応症の詳細

リグロスによる歯周組織再生療法は、歯周病の進行度が中等度から重度の患者さんに適しています。

歯周病初期の方は、骨が失われていない状態なのでリグロスを行う意味がありません。

歯槽骨の破壊が2〜3壁性の垂直性骨欠損で、歯周ポケットの深さが4mm以上ある場合がリグロスの適用となります。

リグロスはジェル状の薬液なので、水平に骨がなくなってしまった部位に塗布しても、そこに留まらずに横に流れていってしまうので、効果がありません。

垂直に、細く深い骨吸収がある場合は、より骨ができやすい状態と考えられます。

また分岐部と呼ばれる、根の間の骨欠損も、効果が出にくい場合が多いです。

この場合は両隣に歯の根があり壁となっているので、リグロスは留まりやすそうに見えます。

それでも効果が出にくい理由は、リグロスの再生方法に関係があると考えています。

FGF-2(b-FGF・塩基性線維芽細胞増殖因子)とは、「血管新生の促進」「骨・などの細胞の増殖、分化」「胚発生や分化の調整」などを行う、ヒト由来のタンパク質です。

つまり、リグロスは「確実に骨になる細胞」ではなく「骨や色々なものになれる可能性のある細胞」と考えてもらうとよいでしょう。

リグロスによる歯周組織の再生の流れを見てみましょう。

術部で血の塊と混ざり合ったリグロスは、時間がたつとまず血管が新生されます。

それにより細胞に栄養が供給されるようになると、リグロスはまず未分化間葉系細胞となります。

この時点ではまだ、それぞれの細胞はこの後、何になるか決まっていない状態です。

ここで骨と接している未分化細胞は、「骨になる細胞」として認識され、骨になるように変化していきます。

同じように歯根膜に接していた部分は歯根膜に、歯の根面のセメント質に接していた部分はセメント質へと変化します。

こうして、リグロスにより骨だけでなくすべての歯周組織が再生されるという仕組みです。

参照:リグロス®の作用機序

それを先ほどの根分岐部で見てみましょう。

この場合、リグロスはしっかり留まっていても、骨と接している部分は底部分の少しの範囲だけです。そのため、なかなか骨の再生が行われにくくなります。

また、肉であれば、リグロスの効果とは関係なく自力での再生が可能です。

そのため、この部分では骨が再生されるまでの間に、周囲から肉が入り込んできていまい、骨ができるスペースがなくなってしまうのも原因の1つと言えます。

リグロスの適用として、歯の動揺度がⅡ度程度までの患者さんが最適な治療対象となります。

更に進行した、歯の動揺度Ⅲ度というと、歯を押したときに歯が上下に動く状態です。

ここまで進行してしまうと、一般的に抜歯の対象となり、リグロスによる治療効果も期待できません。

歯周病菌をコントロールできている状態であることも重要な条件です。

喫煙者の方は、治療効果が低下する可能性があるため、禁煙をお勧めしています。

MASA歯科では、治療前に詳細な検査と診断を行い、リグロス治療が最適かどうかを慎重に判断します。

リグロスを行う患者さんには、治療の成功率を少しでも上げるため、事前にしっかりと口腔衛生指導を行い、口腔内の環境を改善させておくことも重視しています。

患者さん一人一人の症状や生活習慣に合わせた治療計画を立てることで、高い治療効果を実現してきました。

もちろん、外科的な処置に抵抗のある方、適切なセルフケアが行えない方、通院が困難な方などには、無理にリグロスを勧めるということもしません。

禁忌症の注意点

リグロス治療には、いくつかの重要な禁忌症があり、適切な判断が必要です。

感染症や悪性腫瘍の既往歴がある患者さんへの使用は避けなければなりません。

妊娠中や授乳期の方も、安全性が確認されていないため避けた方がよいでしょう。

歯周病の進行度が著しく、骨の吸収が激しい場合は効果が期待できなため、あまりおすすめできません。

また、喫煙習慣のある方は、治療効果が低下する可能性が高いため注意が必要となります。

免疫系に問題がある患者さんや、血液凝固異常のある方も治療のリスクが高まるため、慎重な判断が求められます。

糖尿病などの基礎疾患がある場合は、血糖値のコントロールが安定していることが治療の前提となります。

糖尿病や骨粗しょう症など全身疾患をお持ちの方は、主治医の先生と連携をとり、治療状況の確認などを行いながら慎重に判断します。

お薬手帳や、主治医の先生の名前がわかるものをお持ちいただくと、スムーズに連携をとることができます。

MASA歯科では、術前の詳細な問診と検査により、患者さん一人ひとりの状態を慎重に確認しています。

リグロス治療の適応については、担当医が総合的に判断を行い、最適な治療計画を提案するのがベストな選択肢です。

リグロスと他の再生療法の比較

リグロスと他の歯周組織再生療法を比較することで、最適な治療法を見極めることができます。

歯周病治療には様々な選択肢がありますが、それぞれに特徴や適応症が異なるため、患者さんの状態に合わせて最適な治療法を選択する必要があります。

保険適用で歯槽骨を再生することができるのはリグロスだけです。

しかし、保険適用外の歯周組織再生療法は、以前から存在し、現在も、リグロスではなく保険外の再生療法を選択される方もいます。

以下で、リグロスを含む主な歯周再生療法の特徴や違いについて、詳しく解説していきます。

歯周再生療法の種類

歯周再生療法には、さまざまな治療法が存在します。

代表的なものとして、自費診療のエムドゲイン®による治療、GTR法(組織再生誘導法)、そして保険適用のリグロス®による治療が挙げられます。

エムドゲインは、ブタの歯胚から抽出したタンパク質を用いた治療法で、30年ほどの実績があります。

GTR法は、特殊な膜を使って歯周組織の再生を促す手法で、1980年代から確立された治療方法となっています。

これらに対し、リグロスは2016年に承認された比較的新しい治療薬で、FGF-2という人工タンパク質を活用した画期的な再生療法です。

各治療法にはそれぞれ特徴があり、歯周ポケットの深さや骨欠損の形状によって最適な治療法が異なってきます。

歯科医院での治療費用は、エムドゲインが1歯あたり5〜8万円、GTR法が4〜7万円、リグロス(自費の場合)が3〜5万円程度となることが一般的かと思います。

リグロスと自費の再生療法の違い

リグロスとエムドゲインは、どちらも歯周組織の再生を目的とした治療薬ですが、その特徴には大きな違いがあります。

リグロスは日本で開発された新世代の歯周組織再生剤で、FGF-2という成長因子を主成分としているのが特徴です。

リグロスは、動物ではなくヒト由来の、タンパク質です。ただし、遺伝子組み換えのものになります。

一方のエムドゲインは、ブタの歯胚から抽出したエナメルマトリックスタンパクを含む薬剤です。

エムドゲインもリグロス同様、歯槽骨や歯根膜などの歯周組織を再生する効果があり、また適応症もほぼ同じと言えます。

エムドゲインは世界中で30年程前から使用されてきた材料のため、既に多くの臨床実績が確認されています。

死亡例や発がん性など、大きな後遺症の報告もありません。

それに対してリグロスは、日本製品であるという安心はありますが、まだ比較的新しい治療薬のため、データはエムドゲインよりも少ないといえます。

臨床実績の数ではエムドゲインが圧倒的に多いですが、適応症例や効果に大きな違いはありません。

そのためMASA歯科では、保険適用であるリグロスを使用しており、リグロスでは骨の再生が難しい場合には、バイオスなどの人工材料を使用することが多いです。

バイオスもエムドゲイン同様、世界中で25年ほどの長い実績があります。

バイオスは、ウシ由来の骨補填材で、最初からほぼ骨に近い構造をしています。

そのためリグロスよりも広い範囲や難しい形のときでも、骨の再生が期待できます。

保険適用ではないため5~10万円と、リグロスと比べると高額です。

しかし、保険適用ではないからこそ制限が少なく、バイオス単体ではなく人工膜との併用など、他の材料との組み合わせによって、より再生療法の効果を上げることができます。

再生療法の費用比較

リグロスとエムドゲインの治療費用は、保険適用の有無で大きく異なります。

リグロスは1度に2歯まで保険適用が可能で、自己負担額は3割の場合1歯あたり約1万円程度です。

一方、エムドゲインは完全自由診療のため、1歯あたり5万円から15万円程度の費用がかかります。

MASA歯科で行っている自費診療の再生療法の場合は、主にバイオスを使用しますが、状況によって他の補填材や膜を組み合わせて使用しており、費用は1歯あたり5万円です。

その他の再生療法として、骨移植材を使用する場合は、人工骨で10万円から15万円、自家骨で20万円から30万円の費用が必要になることが多いです。

MASA歯科では、患者様の症状や経済状況に応じて最適な治療法を提案しています。

リグロスは比較的新しい治療法ながら、保険適用により経済的な負担を抑えられる点が特徴的です。

治療前の詳しいカウンセリングで、費用面についてもしっかりと説明いたします。

リグロス治療が失敗する要因

リグロス治療の成功には、適切な治療計画と患者さんの協力が不可欠です。

治療の失敗を防ぐためには、術前の診断と治療後のケアが重要なポイントとなります。

歯周病の進行具合が重度過ぎる場合や、術前から効果が出にくいとわかっている場合もあります。

それ以外でも、以下のような要因は、更に再生療法の効果が出ない原因となります。

  • 口腔内の衛生状態が悪い
  • 噛み合わせの負担が強い
  • 術部の歯肉やポケット内を歯ブラシで触ってしまう
  • 喫煙
  • 全身疾患のコントロール

口腔内の衛生状態が悪いと、治療の効果が十分に発揮されません。治療前後の適切な口腔ケアを心がけることが重要です。

噛み合わせの負担が強いと、骨が形成されなかったり、再生した骨が失われる原因となります。

基本的に、骨ができるまでの約2カ月間は、治療部位では噛まず、反対側の歯で食事をするようにしてください。

必要に応じて噛み合わせの調整を行います。

術部の歯肉やポケット内に歯ブラシが当たると、リグロスが固まる前に材料が流出してしまったり、刺激によって骨の形成が妨げられる恐れがあります。

術後2カ月間は、歯ブラシが術部に当たらないよう注意してください。その分、汚れが溜まらないよう、週に1回程度、医院での洗浄をおすすめします。

喫煙習慣がある場合、治療の成功率が低下するため、できるだけ禁煙をお願いいたします。

また、糖尿病などの全身疾患が適切に管理されていない場合、治療の成功率が下がる要因となります。

治療前に主治医と相談し、全身の健康管理を行うことが大切です。

歯科医院での定期的なメンテナンスを怠ると、歯周病が再発するリスクが高まることも覚えておきましょう。

治療前の十分なカウンセリングと、医師の指示に従った適切なケアが、リグロス治療の成功への近道となります。

患者さん自身の治療に対する理解と協力なしには、良好な治療結果は望めないことを覚えておく必要があるでしょう。

参照:禁煙指導後に歯周組織再生療法を行った一症例

リグロス治療に関するよくある質問

リグロス治療について、患者様からよく寄せられる質問をご紹介します。

治療効果や術後の過ごし方など、多くの方が気になる点について、当院での治療実績と最新の歯科医療の知見に基づいて詳しく解説いたします。

リグロス治療は比較的新しい治療法であるため、インターネット上には誤った情報も散見されますので、ご注意ください。

治療期間や費用、痛みの程度、日常生活への影響など、患者様からよくいただく質問について、わかりやすく丁寧に説明していきます。

リグロス治療の効果はどのくらい持続しますか?

リグロス治療による歯周組織の再生効果は、薬が効果を発揮し続けるわけではなく、再生した歯周組織は、元通りの自身の歯周組織と同じと考えてよいでしょう。

そのため、これといって持続期間のようなものはありません。

日本歯周病学会の調査によると、治療後2年経過時点で85%以上の患者さんが良好な状態を維持していました。

ただし、個人の生活習慣や口腔内環境によって歯周病が悪化する要因があれば、リグロスの治療効果が切れたのではなく、新たに歯周病で骨が失われるという結果になってしまいます。

治療後の定期的なメンテナンスと、毎日のセルフケアで、効果を長期的に維持していきましょう。

治療後のケア方法は?

リグロス治療後は、適切なケアが効果の維持に重要な役割を果たします。

治療直後は、痛みや腫れをおさえるため、運動や、湯船で温まる、飲酒など、血流のよくなることや体があたたまることは避けてください。

また、当日から抜糸する1週間後までは、術部をまったく触らないようにしてください。

その後も2カ月間は術部の歯茎を触ってはいけないため、都度、衛生士から磨き方の指導があります。

食事も、当日は固いものや粘着性のあるもの、塩分や糖分の高いもの、からいものなどの刺激物は避けてください。

翌日以降は、痛みや腫れがなけば生活の制限はありませんが、お食事は2カ月間、術部で噛まないようにしていもらいます。

あとは、バランスの取れた食事と十分な睡眠を心がけるようにしましょう。

治療効果の保証は?

残念ながら、リグロスは必ずしもどれだけ骨ができるという、効果をお約束できるものではありません。

CTなどをみながら事前にしっかりと予測をたててカウンセリングを行いますが、実際の歯茎の中の状態は、実際に開いてみるまでわかりません。

また、本人の生活習慣などにも左右されます。

より確実な効果を期待する場合は、自費診療の再生療法の方が適している場合もあります。

しっかりと説明を聞き、納得したうえで治療を行いましょう。

治療期間は?

術後は最低でも2カ月間は、洗浄や経過観察で通っていただく必要があります。

また、術前に、通常の歯周病の基本治療をすべて終わらせてからでないと、保険でのリグロスを行う事はできません。

全体に歯周病が進行している場合には、基本治療だけでも2~4カ月ほどかかることがあります。

初診からリグロスの術後経過観察終了までは、4カ月から1年程度と、個人差が出ます。

効果はどうやって確認できる?

術後2カ月以上経過してから、レントゲン撮影や歯周ポケット検査の深さによって効果を確認します。

レントゲンでは2次元でしか骨の状態を確認できないため、CTで確認した方が、より細かく骨のできた量や骨の質が確認できます。

リグロスは早ければ2カ月で効果が確認できることもありますが、大抵は1年程がゴールと考えられます。

2カ月経過後は、3カ月に1回程度のペースで通常通りの定期健診で通っていただきながら、都度、経過を確認していきます。

リグロスのリスクは?

リスクとして、術後の痛みや腫れ、出血が考えられます。

大抵は痛み止めでコントロールできることが多いです。

痛みは当日に出て1日以内に落ち着くことが多いですが、腫れは時間差で2~3日後に出ることが多いです。

2016年のリグロス保険適用開始以来、死亡例や重篤な後遺症などは報告されていません。

稀に、リグロス投与部位の付近で、組織の過剰増生がみられるという報告があります。(硬結、肥厚、腫瘤等)

硬結等に関しては、現在のところ国内の症例で主に経過観察としていますが、痛みや歯周病の悪化など、大きな問題への進展はないものとみられています。

リグロスができない人は?

以下の方は、リグロス治療を行うことができません。

  • 歯周病が進行しすぎて、明らかにリグロスでは再生が期待できない方
  • 保険適用の基準を満たしていない方
    (骨と一緒に歯肉も下がってしまい、歯周ポケットが3mm以下の場合など)
  • 口腔内に悪性腫瘍がある、もしくは悪性腫瘍の既往のある方
    リグロスに発がん性はありませんが、がん細胞付近にリグロスが付着すると、がん細胞の増殖を促進してしまうおそれがあります。
  • 術前術後の通院が困難な方
  • 口腔内のプラークコントロールが十分に行えない方

いずれも自己判断はできないため、歯科医に相談してください。

歯周病以外でのリグロスの適用は?

保険上では、リグロスは歯周病治療としての扱いでしか行えませんが、実は骨が溶ける原因は歯周病だけではありません。

  • かみ合わせの負担によって骨がなくなる咬合性外傷
  • 骨の根面のセメント質が一部剥がれてしまうセメント質剥離
  • 歯の根が割れた、ヒビが入った

といった場合にも、歯槽骨が失われ、歯周ポケットが深くなることがあります。

こういった場合にもリグロスによる再生療法が適用となる場合があります。

そのため、年齢の若い方や、セルフケアが上手で歯周病が進行していない方でも、リグロスを行っている症例は多くあります。

原因や状態によって、リグロスで骨ができる期待値や、併せて行う治療の内容は変わりますので、しっかりと治療内容を歯科医師と相談してみましょう。

まとめ:リグロスで歯周病治療の新たな一歩を

今回は、歯周病の治療に悩みを抱えている方に向けて、リグロスの効果や保険の条件、費用、禁忌症などについて解説しました。

リグロスは歯周病治療における画期的な治療薬として注目を集めています。

歯周組織を再生させる効果が臨床的に実証されており、従来の治療法では難しかった骨の再生も期待できる薬剤として、歯周病学会等でもリグロスの症例発表で溢れています。

ただし、治療効果を最大限に引き出すためには、歯科医師による適切な投与と、患者自身による徹底的な歯周病ケアが欠かせません。

これまでの歯周病治療で思うような効果が得られなかった経験をお持ちの方も、リグロスという新しい選択肢を得たことで、治療の可能性が広がったと言えるでしょう。

何度も言いますが、歯周病は早期発見・早期治療が重要です。歯周病になっていても自覚症状のない方がとても多いです。

そして、リグロスで再生できる範囲には制限があります。

できるだけ初期から中等度のうちに発見することで、基本治療やリグロスによって健康な歯周組織を取り戻すチャンスが広がっています。

まずは信頼できる歯科医院で相談してみましょう。

あなたの歯の健康を取り戻すための第一歩として、リグロスによる治療を検討してみてはいかがでしょうか。

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