「フッ素って本当に安全なの?」「子どもに使わせても大丈夫?」
歯医者さんでフッ素塗布を勧められたとき、このような疑問や不安を感じたことはありませんか?
インターネット上には「フッ素は有害」という情報も多く、何を信じればよいのか迷ってしまいますよね。
当院では、このような患者さまの不安や疑問に日々向き合っています。特に小さなお子さまをお持ちの保護者の方々からは、フッ素の安全性について多くのご質問をいただきます。
この記事では、10年以上の臨床経験を持つ当院の歯科衛生士が、フッ素に関する様々な疑問や不安に科学的根拠に基づいてお答えします。
フッ素の本当のリスクと効果を正しく理解し、ご自身やご家族に最適な選択ができるようサポートいたします。
メリットが多いフッ素ですが、MASA歯科では、フッ素が体に入ることに不安を感じる方々の気持ちも大切にしています。
フッ素使用は患者さま一人ひとりの選択を尊重し、強制することはありません。この記事が、フッ素について「知る・選ぶ・決める」ための参考になれば幸いです。
フッ素とは何か?基本的な知識

フッ素(フッ化物)とは自然界に広く存在する元素の一つです。土壌や水、そして様々な食品にも含まれています。歯科領域では、このフッ素の特性を活かして虫歯(う蝕)予防に利用しています。
フッ素の基本情報
- 化学的性質: フッ素は周期表のハロゲン族に属する元素で、自然界では単体としてではなく、化合物として存在します。
- 自然界での存在: 海水、河川、地下水、土壌など幅広く分布しています。
- 食品中のフッ素: お茶、魚介類、海藻などに比較的多く含まれています。

フッ素の歴史
フッ素の歯科利用の歴史は1900年代初頭にさかのぼります。
アメリカのコロラド州での「コロラド茶色斑」と呼ばれる歯の着色が、実は虫歯の発生率が極めて低いことと関連していることが発見されました。
これが天然の水中フッ素によるものだと判明し、適切な量のフッ素が虫歯予防に効果的であることが科学的に証明されていきました。
1945年には世界で初めて水道水へのフッ素添加(フロリデーション)が始まり、以降多くの国々で虫歯予防のためのフッ素利用が広がっていきました。
歯科でのフッ化物歯面塗布が世界で最初に報告されたのは1942年。その後、日本で普及活動が始まったのは1949年からです。
また、日本でライオンから最初のフッ素入り歯磨剤は発売されたのは1948年。
しかし当時、まだ日本ではフッ素の虫歯予防効果の認識がまだ低かったため、あまりヒットはしなかったそうです。
その後も昭和~平成初期頃にかけては、歯磨剤のなかでフッ素入りのものは10%程度だったようですが、現在では虫歯予防の大定番となり、90%以上の歯磨剤がフッ素配合で販売されています。
フッ素の使用方法と種類

虫歯予防のためのフッ化物応用は、大きく分けると、全身応用と局所応用の2種類があります。
全身応用とは、水道水にフッ素を混ぜる水道水フロリデーション、フッ化物サプリメント、フッ化物添加食品などがあります。
あえて水道水に一定濃度のフッ素を混ぜて、日常生活で食事や飲み水からフッ素を取り入れる水道水フロリデーションは、幼少期から歯を強化できることで、高い虫歯予防効果があります。
水道水フロリデーションを実施している国には、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、香港、アイルランド、マレーシアなどがあります。
しかし濃度が高すぎると、歯のフッ素症(斑状歯)が起こるリスクがあることから、日本では実施していません。
日本では、フロリデーションに限らず全身応用は普及しておらず、局所応用による虫歯予防が主になっています。
ここでは、日本でのフッ化物局所応用における方法と、使用するフッ素の種類について説明します。
フッ化物局所応用の3つの方法
①フッ化物歯面塗布
歯科医院で歯科医師および歯科衛生士が、9,000ppmの高濃度のフッ素を定期的に塗布する方法。
使用するフッ素の種類によって、塗布回数や持続期間に差がありますが、一般的に3カ月の虫歯予防効果があるものが多く使用されています。
また各自治体が実施している1歳半検診や3歳児検診、保険センターなどでも、決められた時期にフッ素塗布を受けることが可能です。
海外では12,300ppmや19,400ppmと、もっと高濃度のフッ化物塗布が行われていますが、日本ではそこまで高濃度のものは一般的な予防としては使用していません。
②フッ化物洗口
毎日または週1回程度の頻度で、家庭や保育園、学校などで実施することのできるフッ化物局所応用方法です。
自宅等で使用される低濃度フッ化物洗口液は、一般用医薬品第3類に分類され、お近くの薬局などで気軽に購入しやすくなっています。
毎日法では225ppm~450ppmのフッ化ナトリウム溶液を、週1回法では900ppmのフッ化ナトリウム溶液で洗口します。
虫歯予防効果に関して、この毎日法と週1回の2つに、大きな差はないとされています。
③フッ素配合歯磨剤の使用
フッ化物の配合された歯磨剤の使用は、もっともご自宅で実施しやすいフッ化物応用方法です。
2000年に調査された「世界におけるフッ化物応用の利用人口」では、フッ化物配合歯磨剤の利用者は15億人に達しています。
アメリカのように水道水フロリデーションを行っている地域では、既に水道水から十分なフッ素を取り入れているため、局所応用をわざわざする必要がないと考える人も多いです。
そのため、i-Herbなどのような海外のサイトで人気の商品から歯磨剤を選ぼうとする場合、フッ素の配合されていない商品である可能性があります。
海外製の歯磨剤を購入する場合は、フッ化物全身応用の有無や、元々の歯の硬さなど、様々な違いがあるので慎重に選択するようにしましょう。

フッ化物局所応用に使用されるフッ素の種類
フッ化物応用に使用されるフッ素には、主に以下のようなものがあります。
- フッ化ナトリウム(NaF): phが中性の唯一のフッ素であり、金属腐食のリスクが低い
- フッ化第一スズ(MFP): 日本では、主に歯磨き粉に使用される
- モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP): 特に安全性の高いフッ素と言われており、専門的なフッ素塗布に使用される
- リン酸酸性フッ化ナトリウム(APF):フッ化ナトリウムに正リン酸を加えて酸性にすることで、効果を強くしたもの
これらは濃度や使用方法によって、家庭で毎日使用するものと歯科医院で定期的に受けるものに分けられます。
歯科医院での歯面塗布にはリン酸酸性フッ化ナトリウムが使用されることが多いです。
フッ化ナトリウムは、歯面塗布で使用する場合、濃度は他と同じく9,000ppmですが、頻度と回数が他と異なります。
他のフッ化物はphがすべて酸性になりますが、フッ化ナトリウムだけ中性のフッ素のため、銀歯やインプラント、矯正のワイヤーなどへの腐食の心配がないとされています。
しかし、他のフッ化物は1回塗布した後は、次回の塗布は3カ月~1年後になるのに対し、フッ化ナトリウムだけは「2週間以内に4回塗布」が1セットとなり、これを3カ月~1年ごとに行う必要があります。
今では、フッ素のインプラント等への影響はほぼ無いという考え方が主流となってきているため、歯科医院での歯面塗布では使用されることは少ないです。
ただし、フッ化物洗口に使用されるフッ素は、すべてフッ化ナトリウム製剤となっています。

また、歯磨剤に配合されるフッ化物の種類としても、フッ化ナトリウムがもっとも多いのではないでしょうか。
MASA歯科でも、医院でのフッ化物歯面塗布ではリン酸酸性フッ化ナトリウム(APF)であるフルオールゼリーを使用しています。
フッ素が歯に与える効果

フッ素が歯に与える効果は科学的に広く研究され、確かな証拠が示されています。主な効果は以下の通りです。
再石灰化の促進
私たちの口の中では、毎日「脱灰」と「再石灰化」という現象が繰り返されています。
- 脱灰: 食事や飲み物に含まれる酸によって、歯のエナメル質からカルシウムやリンなどのミネラルが溶け出す現象
- 再石灰化: 唾液に含まれるミネラルが歯に戻り、エナメル質を修復する現象
日常のなかで食事等の影響を受けると、口の中が酸性となり、歯の脱灰が生じるという事実は、当然のことであり避けられません。
脱灰で溶け出てしまったミネラルを、その後自分の唾液の力で歯に戻し、再石灰化させるというバランスが保たれてさえいれば、虫歯になることはありません。
だらだら食べや、糖の頻回摂取などによって、歯の脱灰が起こっている時間が長く、再石灰が追い付かなくなってしまった分だけ、歯の実質欠損が生じて虫歯となります。
フッ素はこの「再石灰化」を助ける働きがあります。

歯の質の強化(耐酸性の向上)
フッ素がある環境では、エナメル質の主成分であるハイドロキシアパタイトよりも強いフルオロアパタイトという結晶が形成されます。
これにより、一度フッ素処理された歯は酸に対する抵抗力(耐酸性)が高まります。
先ほどの説明のように、再石灰化よりも歯の脱灰した分が上回ってしまうと、歯は実際に溶けて虫歯になります。
フッ素の効果によって、再石灰化力を上げるだけでなく、そもそもの脱灰する量を減らすことができます。
細菌の活動抑制効果
フッ素には虫歯の原因となる細菌(ミュータンス連鎖球菌など)の活動を抑制する効果もあります。
具体的には
- 細菌の酸産生能力を低下させる
- 細菌の糖代謝を阻害する
- バイオフィルム(プラーク)の形成を抑制する
これらの効果により、虫歯の発生リスクが大きく低減されます。
科学的に証明された効果
日本口腔衛生学会の報告によると、フッ素配合歯磨き剤の使用により虫歯の発生率が20~30%減少するという結果が示されています。
また、定期的なフッ素塗布を受けた子どもは、受けていない子どもと比較して虫歯の発生率が約40%低いというデータもあります。
フッ素の効果は単なる印象や体験談ではなく、世界保健機関(WHO)や日本歯科医師会も推奨する、科学的根拠に基づいた確かなものです。

「フッ素は体に悪い」という情報の真偽

インターネット上では「フッ素は毒物である」「健康被害がある」といった情報が見られることがあります。
ここでは、そのような情報の真偽について科学的な観点から検証していきます。
フッ素の脳への影響
古くから虫歯予防の確かな効果が認められてきたフッ素ですが、21世紀に入り、各国の研究で「脳への影響」「子どものIQ低下」などの問題が示唆され始めました。
問題とされているのは、水道水フロリデーションで日常的にフッ素を摂取し続けることによる、
「脳の松果体に蓄積し、松果体が石灰化することによって、メラトニン産生が低下する」
「妊婦や乳幼児が飲料水としてフッ素を摂り続けることにより、子どものIQが低下する」
といった内容です。

カナダ、イギリス、中国など各国で研究が進められていましたが、
ついに2024年9月24日、カリフォルニア北部地区連邦裁判所は、「0.7ppmでも子供のIQに不当なリスクをもたらす」と明確に指摘しました。
これによって、フッ素の再評価と規制策定を義務付けられ、テキサス州など数多くの地域で水道水のフッ素添加が中止となりました。
一方で、CDCや米国歯科医師会は依然「科学的根拠が不十分」と反論を続けています。
裁判が行われたアメリカでは、虫歯になれば自費診療で高額な治療費がかかることもあり、虫歯予防意識がとても高く、フッ素への賛否両論は激化しています。
しかし、現在のところ脳や神経発達への影響があるされているのは、水道水フロリデーションとしてのフッ素摂取に限りられています。
特に、代謝能力の低い乳幼児の、粉ミルクを作る際のフッ素入り水道水使用などが問題視されています。
歯磨き粉や、歯科医院でのフッ素塗布による脳への影響は証明されていません。
近年では、フッ素に代わる成分として、アパタイトやCPP-ACPによる虫歯予防効果も実証されてきていますが、今のところ、コストパフォーマンスや認知度などの面でフッ素よりも明らかに劣る状態です。
虫歯予防に関しての研究データの数や統計でも、長く世界中で使用されてきたフッ素と比べると圧倒的に少ないといえるでしょう。
また、CPP-ACP(リカルデント)は、牛乳アレルギーの人は使用できず、アパタイト系の歯磨き粉では、歯が削れやすいものもあるなど、それぞれの課題もあります。
日本では、そもそも問題となっている水道水フロリデーションは行われておらず、かつ先進国の中でトップレベルで1人あたりの虫歯の数が多い国です。
歯科医院での検診で虫歯の早期発見は可能ですが、「虫歯にならない」を実現するためには、砂糖を取らない・フッ素を使用するが現実的な手段となります。
小さな虫歯が出来ることにより、将来的に神経を抜くことになったり、虫歯治療で被せ物が入ることにより清掃が難しくなり、歯周病も引き起こしやすくなったりもします。
小さな初期虫歯が、結果的に数十年後の歯の喪失を招き、それが全身の健康に影響を与えるという可能性は決して無視できるものではありません。
局所応用としては有害性の認められていないフッ素のリスクと、将来の歯を失うリスクを天秤にかけた結果、現在日本ではほとんどの歯科医院でフッ素塗布を薦める、もしくは患者個人の判断に任せるという体制になっているのではないでしょうか。
その他、よく見られる「フッ素の危険性」に関する主張
- 真偽: 科学的証拠なし
- 解説: 国際がん研究機関(IARC)や日本の厚生労働省の調査でも、適切な濃度で使用されるフッ素と発がんリスクの関連性は確認されていません。
- 真偽: 誤解
- 解説: 歯科で使用されるフッ素は医薬品グレードの製品であり、厳格な品質管理のもとで製造されています。工業用フッ素化合物と歯科用フッ素製剤は全く別物です。
- 真偽: 濃度と摂取方法によっては起こりうる
- 解説:井戸水などの天然の水に濃度の高いフッ素が含まれている場合、それを歯の形成時期である8歳頃までに、飲み水として長期間摂取した場合に起こることがあります。
実際、日本では1971年に西山小学校の児童に斑状歯(歯のフッ素症)の症状が認められたことがありました。
これは見た目上、歯がまだらな色になる現象ですが、実際虫歯にはなりにくく、歯の健康被害は認められませんでした。
現在は、日本では水道水のフッ素濃度は0.8mg/L(0.8ppm)以下と定められており、飲食物によるフッ素の影響はほぼ考えられません。
また、歯面塗布においても、濃度と使用方法を理解し、国家資格を有した歯科医師と歯科衛生が塗布を行うことにより、フッ素症が生じる可能性はないものと考
適切な量と過剰摂取の違い
フッ素に限らず、あらゆる物質には「適量」と「過剰摂取」があります。水や酸素でさえ、過剰摂取すれば健康リスクがあります。フッ素についても同様です。
- 適量のフッ素: 虫歯予防効果があり、健康上のリスクはほとんどありません。
- 過剰なフッ素: 長期間にわたって飲み水などとして過剰摂取すると、歯のフッ素症(斑状歯)などの症状が現れる可能性があります。また、フッ化物製剤の誤飲(大量摂取)などにより、急性中毒を起こす可能性があります。
フッ素以外でも、身の回りには過剰摂取により体に害を与えるものはたくさんあります。
たとえば酸素も、生きるために必要不可欠な存在ですが、高濃度になると肺や脳で中毒を起こし、めまい、呼吸困難、吐き気などが生じます。
塩化ナトリウム(塩)や醤油も、摂取しすぎれば高血圧などの健康被害を起こすばかりか、一度に大量摂取すれば死に至る危険すらあります。
そのため、減塩などを意識する方は多くいますが、「子どものために塩分のあるものを一切使わない」という方はいませんよね。
(塩分不足でも、健康被害が出てしまいます)
同じように、世界中の歯科業界でも、当然フッ素の過剰摂取による危険性は理解しています。
しかし、適切な濃度と使用方法を守ってさえいれば、安全性に問題はなく、得られる虫歯予防効果は確かなものであるため、使用を推奨しています。
フッ素中毒
フッ素の発がん性などは、確実に誤りであったと証明されていますが、過剰摂取によるフッ素中毒は紛れもない事実です。
では、どの程度の量でフッ素の急性中毒は起こるのでしょうか。計算してみましょう。
悪心・嘔吐などが発現するフッ化物イオン量(最小中毒量)は、NaFとして4mg/kg(体重)、F(フッ素単体)として2mg/kg(体重)
見込み中毒量(おそらく中毒を起こすであろう、医師の処置が必要である量)はNaFとして11mg/kg(体重)、Fとして5mg/kg(体重)
致死量はNaFとして71~143mg/kg(体重)、Fとして45mg/kg(体重)
となっています。
これをもとに、3歳児(体重15kg)の子どもがフッ素配合歯磨剤を誤って飲み込んでしまった場合、どの程度で中毒症状が起こるのでしょうか。
うがいのできない小さいお子さんでも使用可能なチェックアップのジェル状歯磨剤、バナナ味500ppmで計算してみましょう。
500ppm=0.05%なので、歯磨剤1gあたり0.5mgのフッ素が含まれています。
本体の容量が60gのため、1本あたり30mgのフッ素が入っています。
15kgの子どもの、フッ素による最小中毒量は、2mg/kg×15kgなので30mg。
同じように、医師の処置が必要となる見込み中毒量は5mg/kg×15kgで75mg、致死量は45mg/kg×15kgで675mgとなります。
つまり、500ppmのフッ素配合歯磨き粉60g入りのチューブを半分以上飲み込んでしまった場合、吐き気などをの中毒を起こす可能性があり、注意深く様子を見る必要があります。
また、75mgにあたる、1.25本以上を飲み込んだ場合は、医師による処置が必要となる可能性が高いので、至急受診しなければいけません。
致死量に至るには、チェックアップバナナ味22.5本分となります。
(誤飲で1本を超える状況は、まずあり得ないとは思いますが)

このように大量に飲み込んでしまったという場合には、急性中毒の可能性があります。
商品の使用説明に書いてある通り、小さなお子さんの手の届かないところに保管するよう、気をつけましょう。
勘違いしてしまいがちなのは、これらはあくまで誤飲で一度に大量摂取した場合の摂取量です。
一度に大量にではない場合は、仮に飲み込んだとしても、摂取したフッ素のうち90%以上は24時間以内に尿中から排泄され、体に取り込まれる量はごく少量です。
ましてや、虫歯予防でフッ化物の局所応用を行う場合、歯科医院でのフッ化物塗布でも、洗口でも、歯磨剤でも、塗るだけであって、飲み込むわけではありません。
このことから、歯磨剤や洗口用のフッ素を、お子様の手の届かないところでしっかりと保管さえしていれば、フッ素の保管・使用においての危険性は極めて低いと考えられます。

フッ素の安全性に関する世界での見解
世界保健機関(WHO)、厚生労働省、日本歯科医師会、日本口腔衛生学会など、国内外の公的機関や専門学会は、適切に使用されるフッ素の安全性を認めています。
たとえば、日本口腔衛生学会のフッ化物応用についての総合的な見解(2019年改定版)では、「フッ化物の局所応用は、適切な方法で行われれば安全かつ効果的なう蝕予防法である」と明記されています。
また、厚生労働省の「フッ化物洗口ガイドライン」でも、フッ化物洗口の安全性と有効性が科学的に証明されていると述べられています。
MASA歯科としての見解
MASA歯科でもフッ化物歯面塗布を実施しています。
健康被害の可能性がゼロではないが、極めて低いことと、高い虫歯予防効果が期待できる数少ない成分であり、使用されている歴史も長いということを踏まえた結果です。
しかし、MASA歯科では、
「フッ素による健康被害や中毒の可能性が1%でもあるのなら、フッ素を使いたくない」
「自然のものしか使いたくない」
という考え方も尊重しています。
フッ素に抵抗のある方に、無理にフッ素を勧めたり、保護者の許可なしでお子さんにフッ素塗布を行うということはいたしません。
しかし、歯科医院でのフッ素塗布を行わず、自宅でもフッ素入りの歯磨剤を使用しない場合には、当然虫歯になるリスクが高くなります。
そのため、フッ素を使用したくない方に対しては、フッ素以外のミネラル成分で虫歯予防ができる歯磨剤をおすすめしたり、食事指導による虫歯予防の方法をお伝えしています。

「歯医者でフッ素を塗りたくないと言うと、怒られたり、無理に説得されるのでは」と不安になった結果、歯医者に行かなくなり、気づけば虫歯が進行していた…
となっては、折角ご自身やお子さんの健康を守ってきたのに、本末転倒になってしまいます。
小さい頃に虫歯になり、一度詰め物や被せ物が入ってしまうと、手つかずの歯に比べて、将来その歯を残せる可能性が下がってしまいます。
将来の健康寿命を延ばすために、フッ素推奨派の方も、フッ素を使用したくない方も、それぞれに合った虫歯予防方法を探して実践してみましょう。
「焦げたものを、よほど大量に食べると発がん性がある」という説がありますが、そこまでの量を通常は摂取することはないため、おこげを気にせず食べる。という方もたくさんいるのではないでしょうか。
しかし、「これで癌になるかもしれない」と恐怖を感じる人に、「美味しいから食べなさい」と無理やりおこげを食べさせるのも、おかしいですよね。
それと同じように、フッ素に関しても、正しい知識を知ったうえで、使用するかどうかはご自身で判断していただければよいと考えています。
フッ素のメリット・デメリット

フッ素の利用を検討する際には、そのメリットとデメリットを総合的に理解することが大切です。
ここでは客観的な視点からフッ素のメリットとデメリットを解説します。
メリット | デメリット |
---|---|
虫歯予防効果 経済的 生涯にわたる歯の健康維持 根面う蝕(根元の虫歯)の予防 知覚過敏の軽減効果 | 脳への影響の可能性 歯のフッ素症のリスク 急性中毒のリスク アレルギー反応の可能性 味覚への影響 |
フッ素のメリット
フッ素は虫歯予防に非常に効果的です。歯の再石灰化を促進し、耐酸性の高いフルオロアパタイトの形成を助けるとともに、虫歯原因菌の活動を抑制します。
経済的な面でも大きなメリットがあります。虫歯治療にかかる費用を削減できるだけでなく、定期的なフッ素塗布によって大きな歯科治療を予防することができます。
また、フッ素の利用は生涯にわたる歯の健康維持にも貢献します。
乳歯期からの継続的なフッ素利用により永久歯の保護も可能となり、高齢になっても自分の歯を保つ可能性が高まります。
特に中高年以上の方には、歯肉退縮が見られる場合に発生しやすい根面う蝕(根元の虫歯)の予防にも効果的です。
さらに、一部のフッ素製剤には知覚過敏(しみる歯)の症状を緩和する効果もあります。
フッ素のデメリット
フッ素には発育期(特に8歳未満)の子どもが過剰に摂取した場合のリスクがあります。
歯のフッ素症として、歯に白い斑点や線が現れることがあり、重度の場合は茶色の着色や表面の凹凸が生じる可能性があります。
また、高濃度のフッ素製剤を大量に誤飲した場合には急性中毒のリスクがあります。ただし、適切な管理と使用法を守ることでこれは防止可能です。
フッ素にアレルギー反応を示す方もいますが、これは極めてまれなケースです。
さらに、フッ素塗布直後は一時的に口の中が苦く感じるなど、味覚への影響が生じることがあります。
リスクを最小限に抑えるために
フッ素のデメリットは主に「過剰摂取」と「不適切な使用」によって生じます。以下の点に注意することでリスクを最小限に抑えられます。
- 歯科医師・歯科衛生士の指導のもとで適切に使用する
- 子どものフッ素製品は大人が管理し、適量を守る
- 家庭用フッ素製品(歯磨き粉など)は使用説明書に従って使用する
年齢別フッ素利用方法

フッ素の効果的かつ安全な利用法は年齢によって異なります。ここでは年齢別のフッ素利用方法をご紹介します。
乳幼児期(0〜2歳)
この時期は歯の形成期であり、フッ素の利用には特に注意が必要です。
- 仕上げ磨き時の低濃度フッ素歯磨き剤の使用(米粒大の極少量)
- かかりつけ歯科医院での定期的なフッ素塗布(歯が生え始めたら半年に1回程度)
- 歯磨き粉を飲み込まないよう保護者が注意する
- フッ素入り歯磨き剤の量は米粒大程度にする
幼児期(3〜5歳)
この時期は乳歯の完成期であり、虫歯予防が特に重要です。
- 子ども用フッ素配合歯磨き剤の使用(少量)
- 歯科医院での定期的なフッ素塗布(3〜4ヶ月に1回)
- 保育園・幼稚園でのフッ素洗口(地域によって実施)
- 歯磨きの仕上げは保護者が行う
- 適量の歯磨き剤を使用(6歳未満はグリンピース大程度)
学童期(6〜12歳)
この時期は永久歯への交換期であり、生涯の歯の健康を左右する重要な時期です。
- 子ども用または成人用フッ素配合歯磨き剤の使用
- 歯科医院での定期的なフッ素塗布
- 学校でのフッ素洗口プログラム(地域によって実施)
- 必要に応じてシーラント処置との併用
- 永久歯の萌出直後は特に虫歯になりやすいため、フッ素ケアが重要
- 自分で歯磨きができるようになっても、仕上げ磨きの確認は必要
思春期・成人期(13歳〜)
この時期は自己管理による予防が基本です。
- フッ素配合歯磨き剤の日常的使用
- フッ素配合洗口液の使用
- 歯科医院での専門的フッ素塗布(リスクに応じて頻度を決定)
- 矯正装置使用中は特に虫歯リスクが高まるため、フッ素ケアを強化
- 知覚過敏がある場合は高濃度フッ素配合の特殊歯磨き剤も検討
高齢期
歯肉退縮により根面が露出しやすく、根面う蝕(根元の虫歯)のリスクが高まる時期です。
- 高濃度フッ素配合歯磨き剤の使用
- 歯科医院での定期的なフッ素塗布
- 必要に応じて処方フッ素ジェルの使用
- 口腔乾燥がある場合は特にフッ素ケアが重要
- 義歯使用者も残存歯のフッ素ケアは継続する
歯科医院でのフッ素塗布について

歯科医院で行われるフッ素塗布は、家庭でのケアよりも高濃度のフッ素を用いた専門的な処置です。ここではその詳細をご説明します。
歯科医院でのフッ素塗布の種類
- 濃度:9,000ppmF(家庭用歯磨き剤の約6~10倍)
- 形態:ジェル、フォームなど
- 頻度:3〜6ヶ月に1回(虫歯リスクにより異なる)
- 濃度:22,600ppm以上
- 用途:初期虫歯の進行抑制、知覚過敏治療など
- 適用:特定の症状や高リスク患者
予防として使用する通常のフッ化物歯面塗布ではなく、既に初期虫歯になっている部位の進行止めとして使用する、極めて高濃度のフッ素です。これを全部の歯に塗布するということはありません。
子どもの虫歯の進行止めとして使用され、塗ると歯が黒くなるサホライド(フッ化ジアンミン銀)もこれにあたり、サホライドのフッ素濃度は55,000ppmになります。
フッ素塗布の流れ
当院でのフッ素塗布は以下の流れで行います。
- 歯の清掃(プロフェッショナルクリーニング)
- 歯の乾燥(唾液による希釈を防ぐため)
- トレーまたは綿球を用いてフッ素を塗布
- トレー法であれば、一定時間(約4分間)維持
- 余剰なフッ素の吐き出し
- すすぎ(必要に応じて)
- 食事・飲水の制限(30分〜1時間)
フッ素塗布後は、歯の表面にフッ素が付着しているだけです。これが実際に歯に取り込まれるまで30分程度かかります。
その間に飲食やうがいをしてしまうと、歯に取り込む前にフッ素が流れてしまい、効果がなくなってしまいます。
費用と保険適用
フッ素塗布の費用と保険適用は以下の通りです。
- 3歳未満:場合によって無料(母子保健事業として)
- 虫歯予防として:原則自費
- 初期虫歯や、虫歯の可能性がある歯がある場合:保険適用
フッ素塗布後の注意点
フッ素塗布の効果を最大限に引き出すため、以下の点にご注意ください。
- 処置後30分〜1時間は飲食を控える
- 処置後のブラッシングは歯科医師・歯科衛生士の指示に従う
- 歯科医院でのフッ化物歯面塗布を行った場合でも、自宅でのフッ素入り歯磨き粉の使用や、学校でのフッ化物洗口は今まで通り行って問題ありません。
家庭でのフッ素ケア方法

家庭で日常的に行えるフッ素ケアは、歯科医院での専門的ケアと併用することでより効果的です。ここでは家庭でできるフッ素ケア方法を詳しく解説します。
フッ素配合歯磨き剤の選び方と使用法
年齢別の選び方
2023年1月1日に、日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会の4学会が合同で、
フッ化物配合歯磨剤について、推奨される利用方法の新たな基準を発表しています。
これまでの基準では、乳幼児では500ppm、未就学児では1,000ppm以下が推奨されていましたが、現在は基準値が上がり、以下のように変更されています。
- 乳幼児(〜2歳): フッ素濃度1,000ppm、米粒程度の量
- 幼児(3〜5歳): フッ素濃度1,000ppm、グリーンピース程度の量
- 6歳〜成人・高齢者: フッ素濃度1,500ppm、歯ブラシ全体

効果的な使用法
- 3歳未満:米粒大
- 3〜6歳未満:グリンピース大
- 6歳以上:歯ブラシ全体につく量
- 軽くすすぐか、または「吐き出し法」を採用(すすがずに吐き出すだけ)
- すすぎ過ぎるとフッ素効果が減少
- すすぐ場合は10~15mlの水で1回のみ
- 朝と就寝前の1日2回以上
- 特に就寝前のブラッシングが重要(夜間は唾液量が減少し虫歯リスクが高まるため)
現在はフッ素の安全性が保障されてきたことと、フッ素以外にも殺菌成分や抗炎症成分などの有効成分も多く配合されるようになってきています。
そのため、ただ「歯を綺麗にするためのもの」ではなく、塗り薬のように、「薬用効果をしっかり出すもの」という認識に変わってきています。
しっかりとした量を使用し、できるだけ歯磨剤の成分を口の中に残すことを意識するよう、心がけましょう。

フッ素配合洗口液の使用法
フッ素洗口(フッ素でのうがい)は、特に矯正装置を使用している方や、虫歯リスクの高い方におすすめの方法です。
種類と選び方
- 毎日使用タイプ: フッ素濃度225〜500ppm程度
- 週1回使用タイプ: フッ素濃度900ppm程度(学校でのフッ素洗口プログラムなどで使用)
効果的な使用法
- 5〜10mlを口に含む
- 30秒〜1分間ブクブクうがい
- 吐き出し、30分間は飲食を控える
- 6歳未満の子どもには推奨されない(誤飲の可能性があるため)
- ブラッシング後に使用するとより効果的
家庭でのフッ素ケア成功のポイント
- 毎日の習慣化が重要
- 「やりすぎ」より「続けること」を優先
- 子どもは大人の真似をする傾向がある
- 家族みんなでフッ素ケアを習慣化
- 家庭ケアだけでなく、専門家による定期チェックも重要
- 当院では家庭ケアの効果確認と個別アドバイスを提供
フッ素に関するよくある質問と回答

患者さまからよくいただくフッ素に関する質問とその回答をまとめました。疑問や不安の解消にお役立てください。
- フッ素は自然界に存在するものですか?それとも人工的に作られたものですか?
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フッ素(フッ化物)は自然界に広く存在する元素です。土壌や水、そして海産物やお茶などの食品にも含まれています。
歯科で使用されるフッ素製剤は、この天然のフッ素化合物を精製・調整して作られたものです。
完全な人工物ではなく、自然に存在するものを医療用に加工したものと考えるとよいでしょう。
- フッ素塗布は痛みますか?子どもが怖がっていますが大丈夫でしょうか?
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フッ素塗布自体は痛みを伴いません。ジェルやフォームを歯の表面に塗るだけの処置です。
塗布後に「ピリピリ」とした感覚や、少し苦みや酸味を感じることがありますが、これは通常の反応で心配ありません。
当院では特に小さなお子さまには、フッ素の味に慣れていただくためにフレーバー付きの製品を使用したり、リラックスして受けられる工夫をしています。
怖がっているお子さまには、まずは様子を見学していただくところから始めることもできますので、ご相談ください。
- フッ素アレルギーはありますか?どんな症状が出るのでしょうか?
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フッ素アレルギーは非常にまれですが、存在します。症状としては、口腔内の粘膜の炎症、発疹、かゆみなどの一般的なアレルギー症状が現れることがあります。
ただし、「フッ素アレルギー」と思われる症状の多くは、実際にはフッ素製剤に含まれる他の成分(香料や着色料など)に対するアレルギー反応であることが多いです。
心配な方は、まず少量で反応を確認する「パッチテスト」を行うことも可能ですので、アレルギー体質の方は事前にご相談ください。
- 妊娠中・授乳中のフッ素使用は安全ですか?
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現在の科学的知見によれば、妊娠中・授乳中の通常のフッ素使用(歯磨き剤や歯科医院でのフッ素塗布など)は安全とされています。適切な口腔ケアは妊娠中の歯周病予防にも重要です。
ただし、高濃度のフッ素製品を使用する際は、念のため歯科医師に妊娠・授乳中であることをお伝えください。個々の状況に応じた適切なアドバイスをいたします。
- フッ素を使い続けると歯が変色しますか?
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適切な量のフッ素使用では歯の変色は起こりません。
変色のリスクがあるのは、主に発育期(8歳未満)の子どもが長期間にわたって過剰量のフッ素を飲食物から摂取した場合です。
通常の歯磨きやフッ素塗布で使用する量では、フッ素症のリスクはほとんどありません。
むしろ、フッ素を適切に使用することで、着色の原因となる虫歯や歯の変色を予防できるメリットの方が大きいでしょう。
- 子どもがフッ素入り歯磨き粉を飲み込んでしまった場合、どうすればよいですか?
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少量(1回分程度)であれば、基本的に心配ありません。通常の歯磨き粉に含まれるフッ素量では、万が一飲み込んでも急性中毒を起こすほどの量ではありません。
ただし、チューブ単位などの大量摂取の場合は注意が必要です。吐き気、腹痛、嘔吐などの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
予防のために、子ども用の歯磨き粉は子どもの手の届かない場所に保管し、使用時は保護者が適量を出すようにしましょう。
- フッ素洗口(うがい)はいつから始めればよいですか?
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フッ素洗口は、うがいの仕方を理解し、液体を飲み込まずに出せるようになる年齢(一般的には4〜5歳以降)から始めることが推奨されています。
ただし、家庭での個人使用であれば、確実に吐き出せることを確認できる6歳以降が安全です。
学校や幼稚園などの集団でのフッ素洗口プログラムは、通常4〜5歳から実施されることが多いですが、これは専門家の監督下で行われるためです。
低年齢のお子さまの場合は、まずはフッ素配合歯磨き剤の使用から始め、年齢に応じてフッ素洗口を検討するとよいでしょう。
- フッ素塗布とシーラントはどちらが効果的ですか?両方必要でしょうか?
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フッ素塗布とシーラントは役割が異なるため、どちらが優れているというより、補完的な関係にあります。
- フッ素塗布: 歯全体の耐酸性を高め、再石灰化を促進します。
- シーラント: 主に奥歯の溝など、深すぎてブラシの毛先が入らない場所を樹脂で封鎖し、細菌の侵入を物理的に防ぎます。
特に虫歯リスクの高いお子さまには、両方を併用することをお勧めします。
シーラントで溝を保護しながら、フッ素で全体的な歯質強化を図ることで、より効果的な虫歯予防が可能になります
- フッ素は継続して使い続ける必要がありますか?
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はい、フッ素の効果を最大限に得るためには継続的な使用が重要です。
フッ素の効果は一時的なものではなく、継続的に使用することで効果が蓄積され、より強固な虫歯予防効果を発揮します。
特に成長期のお子さまは、新しく生えてくる永久歯を守るためにも継続的なフッ素ケアが大切です。
また、大人の方も年齢とともに口腔内環境が変化し、特に根面う蝕(歯の根元の虫歯)のリスクが高まるため、生涯を通じたフッ素ケアをおすすめします。
北広島市での歯科フッ素治療について

北広島市では、歯科保健の向上を目的とした取り組みが行われています。ここでは、地域に特化したフッ素治療情報をご紹介します。
北広島市内の学校でのフッ素洗口事業
北広島市では、一部の小学校においてフッ素洗口(フッ化物洗口)事業を実施しています。
- 実施校: 市内の一部小学校(各学校にお問い合わせください)
- 実施方法: 週1回法(900ppmF)または日1回法(225〜500ppmF)
- 保護者同意: 保護者の同意を得た児童のみ参加
- 効果: 実施校では虫歯罹患率の減少が報告されています
お子さまの通う学校でフッ素洗口が実施されている場合は、積極的な参加をご検討ください。
学校と家庭での二重のフッ素ケアにより、より効果的な虫歯予防が期待できます。もちろん、歯科医院でのフッ化物塗布と併用も可能です。
定期的なフッ素塗布やお口のケアについて、お気軽にご相談ください。
まとめ:フッ素と上手に付き合うために

この記事では、「フッ素は体に悪いのか?」という疑問に対して、科学的根拠に基づいた情報をお伝えしてきました。
最後に、フッ素と上手に付き合うためのポイントをまとめます。
フッ素について理解すべき重要なポイント
- フッ素は適切に使用すれば安全で効果的
- 世界保健機関(WHO)や日本歯科医師会も推奨する虫歯予防法
- 適切な濃度と使用方法を守ることが重要
- フッ素は「万能薬」ではない
- フッ素だけでなく、正しいブラッシングや食生活も重要
- 総合的な虫歯予防の一環として活用するのが効果的
- 年齢や状況に応じた使用法がある
- 子どもと大人では推奨される方法や濃度が異なる
- 個人の虫歯リスクに応じたカスタマイズが理想的
フッ素を効果的に活用するために
- 歯科医師・歯科衛生士に相談する
- あなたやお子さまに最適なフッ素ケア方法を専門家に相談
- 定期検診で効果を確認し、必要に応じて調整
- 家庭と歯科医院のケアを組み合わせる
- 毎日の家庭ケア(フッ素配合歯磨き剤など)
- 定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケア(フッ素塗布など)
- 正しい情報に基づいて判断する
- インターネット上の情報は出典を確認
- 科学的根拠に基づいた情報を重視
最後に
フッ素は、正しく使えば虫歯予防の強い味方となりますが、化学的物質に不安を感じる方がいらっしゃることも私たちは理解しています。
当院では、フッ素を使用するかどうかは患者さまの考え方や価値観を尊重し、決して強制することはありません。
フッ素を使用しない選択をされる場合でも、他の効果的な虫歯予防法をご提案させていただきます。
食生活の見直し、丁寧な歯磨き指導、プロフェッショナルクリーニングなど、フッ素以外の方法でもお口の健康をサポートできます。
不安や疑問があれば、いつでも当院の歯科医師・歯科衛生士にご相談ください。
私たちは北広島市と周辺地域の皆さまのお口の健康を守るため、様々な選択肢と情報を提供し、一人ひとりの価値観に寄り添った歯科医療を提供し続けます。
子どもから大人まで、それぞれの選択を尊重しながら、健康な歯を守るお手伝いをさせていただきます。
参考文献
厚生労働省関連
- フッ化物洗口マニュアル(2022年版)
https://www.mhlw.go.jp/content/001037973.pdf - フッ化物配合歯磨剤 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-007.html - フッ素樹脂加工された食品用器具・容器包装の安全性に関する研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/13267 - PFOA及びPFOSに対するIARCの評価結果に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001213119.pdf
日本口腔衛生学会関連
- フッ化物配合歯磨剤に関する日本口腔衛生学会の考え方
https://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/statement/file/statement_20180301.pdf
環境省関連
- PFOS、PFOAに関するQ&A集(案) – 環境省
https://www.env.go.jp/content/000140370.pdf
衆議院関連
- フッ素の安全性に関する質問主意書 – 衆議院
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumona_pdf_s.nsf/html/shitsumon/pdfS/a102011.pdf/$File/a102011.pdf
学術論文
- フッ素は毒物である – 富山国際大学
https://www.tuins.ac.jp/common/docs/library/2003chiiki-PDF/ando.pdf - フッ化物洗口の有効性と安全性に関するQ&A – 青森県
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/ganseikatsu/files/f-senko-kensiQA.pdf - コミュニティ問題としてのフッ素論争 – 東京都立大学
https://tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp/record/5350/files/20024-040-009.pdf